森吉山県立自然公園の
拡張地域と地種区分の格上げ(案)

2022年6月14日 環境省は森吉山県立自然公園を
国立・国定公園の大規模拡張候補地に選定したことを発表しました。
受入れ体制が整ったところから調査に入る。という環境省の呼込みに対し
★森吉山を十和田八幡平国立公園に編入するのか。
★又は森吉山国定公園の新規指定を選択するのか。
北秋田市はその意向を示さなければなりません。
拡張と新規指定にあたっては、現在の公園区域の地種区分のアップや
周辺の保護すべき拡張地域の選定が条件となります。
私たちは、環境省の調査に先駆けて、以下のオレンジ斜線の区域を公園拡張地域に組入れ
今後の利用計画に反映させるよう、北秋田市と環境省に提案しました。

<森吉山県立自然公園の区域は緑のラインで囲まれた部分です> 
   紫・・・・・第1種特別地域   ・・・・第2種特別地域
   緑・・・・・第3種特別地域   ・・・・普通地域
   斜線・・・拡張地域(案)  
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 1.拡張地域(案)
 ●「ぐるっと森吉山」は、全集水域の小又川と打当川を束ねる阿仁川流域の町や村によって形作られています。
  私たちは、その阿仁川と並走する秋田内陸線とその沿線の里地里山を自然公園に組入れ、
  スマイルレールで「つなぎ、みせる」、回廊型の森吉山国定自然公園の新規指定(利用)を目指しています。
 ●当初、提案した4地域に、阿仁川とスマイル列車及び沿線の里地里山を加えた、5地域の拡張(案)を再度提案するものです。
   (1)太平湖(森吉ダム)の全集水域
   (2)小又川と四季美湖(森吉山ダム)集水域 
   (3)森吉山西麓
   (4)マタギの里山里地と打当川流域
   (5)阿仁川と秋田内陸線及び沿線の里地里山

 ●この拡張(案)は、環境省が選定要件に掲げる、人の営みが里地里山の景観を造り上げた二次的な自然環境(風土)を
  組入れた提案です。
 ●特に小又川と打当川を結ぶ阿仁川の中流域は、春先のウグイの遡上に始まり、梅雨明けのアユ漁は 
   「第24回全国清流めぐり利きアユ大会」で準グランプリーの栄冠に輝くなど、全国の釣人たちには憧れの清流となっています。
  そして、源流域に至っては、「釣りキチ三平」の世界が待っています。
 ●また、阿仁川は多くの水鳥が生息地する、濃密な生態系を温存する流域です。
  自然公園化によって河川域からゴミ捨てが一掃された原風景に、多くの乗り鉄・撮り鉄が集う「観光鉄道あきた内陸線」を
  重ね合わせたいものです。
 ●この拡張地域の地種区分は、利用規制が小さい第三種特別地域や普通地域指定を行うことで、現在の森吉山県立自然公園(15,214ha)
  の約2倍に及ぶ3万haの指定が想定されます。

@太平湖(森吉ダム)全集水域
太平湖東部に及ぶ全集水域が対称です。
戦後復興期の秋田杉伐採や拡大造林計画による
ブナ林伐採地の、スギ植林地が成長せず、
天然林が見事に再生しています。
 
A 小又川と森吉山ダム(四季美湖)流域
奥森吉への玄関口、森吉山ダムを起点に、
太平湖ダムまで続く15キロの河畔林が織りなす渓谷美は、
奥森吉への序章にふさわしい。
更に、太平湖の集水域六郎沢(約5000ha)を拡張地域に要望。
 


B 森吉山西麓のブナ帯
ゴンドラ遊覧で眺める石森〜森吉神社〜一ノ腰まで続く
西麓一帯の広大なブナ林はゴンドラ観光のパノラマ展望地区です。
実は、このパノラマビューポイントが自然公園に入っていません。
 
C 奥阿仁のマタギの里山里地と打当川流域
奥阿仁の玄関口である比立内地区を起点とする打当川流域は、
マタギの里の名瀑めぐりの行動拠点にふさわしい、
里山里地の生態系を温存する未来に残すべき日本の原風景である。
 

D阿仁川と秋田内陸線及び沿線の里地里山
阿仁マタギ駅から阿仁前田温泉駅に至る30q区間の
「阿仁川と秋田内陸線と人の営みが創り出した
里山景観を自然公園に組入れる
提案です。」

特に阿仁川のアユ漁は「第
24回清流めぐり利きアユ会」で
準グランプリーの栄冠に輝くなど、
全国の釣人たちには憧れの清流となっています。
 

2.既存公園内の地種区分格上げ地域(案)
環境省は拡張地域と併せて既存公園内の地種区分の格上げも進めます。
森吉山も、標高 700m以上の源流部を形成する
第三種特別地域のブナ帯の多くが木材生産林であるため、
景観保全と公園区域内の天然林保護に立脚した
具体的な地種区分の格上げが必要です。
特に、奥阿仁の打当内沢や岩井ノ又沢は里山に連続する源流部であり、
奥森吉の立川源流域のブナ帯は、アオモリトドマツから連続する最後に残された水系の源です。

<戦後復興の木材資源供給を担った森吉山>
●森吉山は戦後復興のため天然秋田スギ、ブナ材のフローリングやチップ材の
供給地としてその使命を担ってきました。
●その後に続く拡大造林計画(ブナを伐採し成長の早いスギを植林)によって
森吉山自然公園の70%のブナ林は伐採の対称となり、急速にスギ植林地に変貌していきました。
●白神山地とは異なり、なだらかな山容ゆえに、伐採の手が容易に及んだことがその要因です。
●1980年代に入り全国的に高まった自然保護の声に応えた林野庁は
森林二法を見直し、国土保全林や自然維持林の他に、森林空間利用林と言った
天然林施業を行わない林地区分を設けました。
●しかし、その林地区分から外れた、奥森吉のヒバクラ岳の源流域や
奥阿仁の打当内沢、中ノ又沢など森吉山山体を取巻く、
標高 700m以上の源流域を形成する、ブナ帯の多く が木材生産林になっています。
●私達考える会は、登山道や稜線部から望む源流域の景観と天然林保全に立脚した
地種区分の格上げ地域を環境省と北秋田市に要望しました。

@ 奥森地区の立川源流域のブナ帯
平成10年8月、ボーイスカウトとガールスカウト達で4年毎に開催される野営大会、
日本ジャンボリーが約3万2千人のスカウトを集め森吉山麓高原(旧ノロ川牧場)で開催されました。
当時、皇太子殿下で在られた今上天皇徳人様は大印展望地にお立ちになり、
クマゲラの森とヒバクラ岳源流域のブナ林を眺望されました。
そして、こんなお言葉を残しておられます。
それは、「何とも素晴らしい自然ですね」ではなく
「よく これだけの自然を残すことが出来ましたね」。と述べられたそうです。
このお言葉の本意を継承したいものです。

奥森吉の立川源流域のブナ帯
ヒバクラ岳の見晴しから立川源流域を俯瞰する 

A 奥阿仁地区の打当内沢・岩井ノ沢源流域のブナ帯
奥阿仁の打当内沢〜岩井ノ又沢源流域のブナ帯
ヒバクラ岳の小池ヶ原から打当内地区を俯瞰する 

NPO森吉山ネイチャー協会
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