日時 平成22年3月17日(水) 午前9時40分
               場所 上小阿仁小・中学校 体育館 

 12月にハッピーボランティア委員会で校舎前の花壇に植えたチューリップの芽が霜柱の間から顔をのぞかせ、池の小鮒も動き始めるなど、村のあちらこちらから膨らんできた春の足音の上に、ふんわりと降り積もった雪で、白いタキシードやウエディングドレスを着た花婿・花嫁が旅立つような景色となりました。今日の佳き日、卒業証書を手にした30名の卒業生の皆さん、本校3期生としての卒業おめでとうございます。
 本日は、本校の卒業式に、皆さんの卒業を祝い、村長をはじめ、多数の御来賓の方々の御臨席を賜りましたことに、心より感謝申し上げます。
 さて、6年前を思い起こしてみますと、皆さんは、小沢田小学校と沖田面小学校に入学しました。集団での遊びが活発となる小学校4年生になる時に、統合した本校に入り、小沢田小15名、沖田面小14名だった同級生が、一気に29名に膨らみました。皆さんが学校祭で紹介した劇のように、最初はなかなか、みんなで遊べなかったのではないかと思います。小沢田小グループと沖田面小グループができていたのではないでしょうか。しかし、次第に 皆で遊ぶようになり、出身小学校別のグループはなくなったのだと思います。昨年、嶋田多希さんを迎え30名となり、上小阿仁村では平成13年度以来、8年ぶりに30名を数える卒業生となりました。
 平成21年4月。「友だちとの きずなを深め 明るく元気に 光かがやく 上小っ子」という児童会テーマを掲げ、最上級生としての6年生がスタートしました。登校班や掃除の縦割り班では、12名の1年生を新たに迎え、リーダーとして動くことが求められました。5月の体育祭では、中学生が練習している応援合戦の演技をのぞき見て、工夫を凝らし、小学生の応援演技がみるみるバージョンアップして驚きました。学校祭では、創作劇「ギャラクシートレイン」を見事に演じ、全校合唱でも小学生のリーダーとしてしっかりと歌いき り、会場からたくさんの拍手をいただきました。
 学習でも成果を上げました。全国学力学習状況調査では、全国で1位の秋田県の平均よりもさらに良い結果でしたし、作文・標語・読書感想文・習字・絵画等、たくさんの人が入賞しました。授業に取り組む姿勢は、今年度、学校に来た、たくさんのお客様から、ほめられました。
 そして部活動。野球部とミニバスケットボール部は、あと一歩で全県大会出場という、見事な活躍ぶりでした。たくさんの地域の方々から、連日応援していただいたことを思い出します。相撲部と陸上部、スキー部は全県規模の大会に出場することができました。中でも陸上競技の全県大会では、県新記録で優勝した安藤駿君、優勝して全国大会で14位の記録を出した保坂康耀君、3位入賞を果たした田中愛子さん、アルペンの東北・全国規模の大会に出場した大沢直也君、山形麗奈さんの活躍も見事であったと思います。
 しかし今日は、皆さんに紹介したいことが2つあります。1つは、朝、集団登校で1年生が遅れると、後を振り向き、叱りもせずにじっと待っていた班長の前田弥希さんです。体の小さい1年生は必死で歩いているのですが、大きな鞄を背負いなかなか追いつくことができません。しかし、1年が終わろうとしている今、班長を待たせる時間が、ずいぶんと短くなりました。この後輩を思いやる気持ちこそが、どんなことにもつながる『活躍を支えてきた心』だったと思います。もう1つは、決勝戦で敗れた森吉球場での閉会式において、 「準優勝 上小阿仁小学校」とアナウンスされた時に、整列したマウンドから、球場一杯に響き渡る大きな声で、「ハイ」と返事をすることができたキャプテンの古矢恭介君です。優勝こそできませんでしたが、この返事には、これまで一緒に練習を頑張ってきた仲間、支えてくれたコーチや監督、応援してくれた保護者や地域の皆さんへの思いが全て込められていて、とてもすがすがしく感じ、「ハイ」の一言に会場からも大きな拍手が送られました。この2つの出来事は、2人が自分だけの思いや力で出来たのでしょうか。私は決してそれだけだとは思いません。6年生30名が学習や生活を通して、互いに高め合い学び合ったからこそ出来たことではないかと思います。卒業生全員の思いやりの心であったと思っています。
 いよいよ卒業です。卒業にあたり皆さんに1つだけお願いがあります。それは、自分自身を鍛えようとする心を持った中学生になってほしいということです。今、世の中は、不景気のため、新入社員をたくさん採用する会社が少なく、この3月に高校を卒業しても就職できない人が、2月の段階で全県に159名もいるそうです。そのような状況の中で、皆さんが会社の社長であったら、どんな人を採用しますか。「それはつらそうだから、楽な方を選ぶ。」と考え、楽なことばかりしている人を採用しますか。そのような人ばかりの会社になったら、みんなが楽をして、つらい仕事をする人がいなくなりますね。これでは会社はうまくいきません。皆さんには、「この生徒は何にでも前向きに努力するので、是非うちの会社に採用したい。」と思われるような生徒に、将来なってほしいと思います。今年の冬、沖田面から学校まで、毎朝歩いて登校した中学生が6名いました。家の人に車で送ってもらえば楽に学校に来られるのに、親の力を借りずに、吹雪の日も自分の足で歩いて学校に来ました。自分の弱い心・楽をしたい心に負けないで、歩き通したと思います。中学生の時期は、かなり困難なことでも友達と一緒に挑戦し、皆で高め合うことができます。いや人生の中 で、この時期しかそのようなチャンスはないかもしれません。勉強でも、部活動でも楽な道を選ぶのではなく、常に難しいことにチャレンジし、そしてそれを乗り越える、すなわち自分自身を鍛えようとする心を持った中学生になってほしいと願っています。皆さんに渡した卒業証書の一文字一文字に、私のその気持ちを込めたつもりです。
 保護者の皆様、御家族の皆様、お子様の御卒業おめでとうございます。卒業生が誕生した平成9年度は、秋田新幹線が開通し、大館樹海ドームがオープンするなど、県内には活気がみなぎり、スポーツでも、長野オリンピックで日本が5つの金メダルを獲得するなど、日本中が沸き立った年でもありました。そのような状況の中で、お子様の誕生は、大きな喜びに包まれていたのではないかと思われます。ハイハイをしたり、立ち上がってよちよち歩き始めたりと、成長する我が子の様子は、御家族皆様の喜びであったと思われます。あれから12年が経ち、たくましく成長した姿に、御両親をはじめ御家族の皆様の感慨もひとしおでないかと思われます。改めて、お子様の卒業をお祝いするとともに、これまで本校の教育活動に御理解、御協力を賜りましたことに、深く感謝申し上げます。6年間お預かりした子どもたちを一旦お返しします。私ども教職員の至らぬ点も多々あったのではないかと思います が、中学校で子どもたちが一層活躍するように努力することをお約束し、式辞といたしま す。

平成22年3月17日
上小阿仁村立上小阿仁小学校 校長 佐藤 昭洋
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