時 事 法 談 (63)

「国際情勢と我々のあり方について」

2005年6月2日

大館三ノ丸道院専有道場にて

合掌

 金剛禅では、「半ばは自己の幸せを 半ばは他人の幸せを《という少林寺拳法(r)の基本理念を本気で追求し、平和で豊かな理想社会実現に向けて行動できる人を育て、そんな人達が協力して世界の平和と福祉に貢献しようという社会運動を金剛禅運動と称して展開しています。
 そこでこのページには、人づくりの一手段として普段私が行っている稚拙な法話の一部を、金剛禅運動の一環として、浅学非才を顧みず恥ずかしながら連載して参ります。(更新は上定期)
 この拙話をきっかけとして、さまざまな議論が巻き起こり、平和と福祉に貢献する実効ある活動が、世界中で展開されることを心から願ってやみません。皆様のご意見ご感想をお寄せ下さい。

結手

さて、今回は「国際情勢と我々のあり方について《お話します。

1、 開祖デー

 最初に、昨日の事故についてお話ししなければなりません。少年部の拳士の友達で小学校3年生の男の子が、昨日の午後自転車に乗っていて事故に遭い、今朝方亡くなりました。8歳です。子供たちの時間にも話したのですが、命の大切さ、そしてその命を守るためにも危機管理を徹底する事の大切さ、そんなことを改めて考えさせられました。
さて、日曜日の「開祖デー《、お疲れ様でした。2年前の「開祖デー《で、車イスに乗ったり視覚障害体験をしたり高齢者体験をしたりしながら市役所周辺を歩いて、だれにとっても住みやすい町にするにはどうしたらよいか、みんなで考えました。その結果を文書にまとめて市長と教育長に提出したら、去年の年末になって、その後の改修状況を市の総務課から報告されましたね。それを受けて、行政に頼るばかりではなく自分たちにできる社会貢献を考えた結果、今年は、桂城公園と武道館のトイレ掃除をすることにしたわけです。
 たった1回の掃除が及ぼす影響はたかが知れています。けれども、私たち自身がそういう形で作務をすることによって、自分の生き方を見つめなおす事ができたら、普段からリーダーになろうと修行している拳士ですから、どれだけ社会に良い影響を及ぼす事ができるか、もう一度一人一人で考えてみてください。
 今回の「開祖デー《は、やった事自体の実効性よりも、これから先の教育効果を狙ったものです。またそんな私たちを見て社会の人たちが、何かを感じていただければと期待して、マスコミへの記事提供もしました。先ほど子供たちに感想を聞きましたが、実際に手を便器に突っ込んで掃除をした経験は、彼らに良い影響を与える事ができたと思っています。
何らかの仕事をするときには、「半ばは他人の幸せを《考えなければいい仕事になりません。たとえば、桂城公園は、業者が入ってトイレの掃除をしていますが、トイレの汚れは当然上よりも下のほうがひどくなりますよね。そしてトイレに座ったときに汚れが目立つ場所もそういうところです。ところが掃除をする人が立ったままでやると、一番下の一番汚れているところには目が届きません。だから、便器の前の壁はひどく汚れていましたよね。仕事の目的や、それが及ぼす他人への影響を考えれば、当然仕事の質が変わってきます。私たちリーダーを目指す人間は、そういう感性を持って、本気で他人の幸せを半分くらいは考えられるようにならなければいけませんよ。今回の開祖デーが成功だったか失敗だったかは、私たちの今後にかかっています。修行者としての生き方を貫きましょう。

2、 昇格考試学科

ところで、7月に初段を受験する拳士がいますので、今日は、その学科試験問題について、少し時間をとって講義したいと思います。満点合格を目指して取り組んでください。「少林寺拳法は人づくりのための行である《、「少林寺拳法の六つの特徴《、「修行の心得《、「当身の五要素《、「少林寺拳法の修練体系《、「気勢と気合について《、「攻防の間合いと機会《、「本当の強さ《のそれぞれについて簡単に説明します。(略)

3、 日中関係

さて今日は、「国際情勢と我々のあり方について《日中関係と日米関係を中心にお話したいと思います。最近の日中関係は、大分いろいろと取りざたされていますが、みなさんはどう考えていますか。表面に見えているものをまっすぐに見ると、中国政府や中国人民が日本の政治に対して上信感を持ち、「日本は、過去の戦争に対する反省が足りないから、もしかするとまた侵略してくるかもしれない《という危機感を表明しているようにも思えますよね。また、中国の国内事情を考えれば、貧富の差が激しく、共産体制を維持しながら資本主義を導入している中国という国が、国内的に経済的あるいは政治的な問題を抱えているから、人民の目を内政から外交へ転換させようとしているという風にも思えます。こういうやり方は、どの国も当たり前のように使う手ですからね。
でも果たして、そういった行き当たりばったり的な事ばかりが原因なのでしょうか。国際社会はもっと狡猾でシビアに徹底的に考えられた思惑が中心となりながら、そこに人のあいまいな意思決定が混然となって動いていくものなのではないでしょうか。日本以外のごく当たり前の国は、そういう外交をしていると思います。ちなみにあいまいな意思決定については、先月お話した法政大学の遠田先生がまとめられた書籍がありますので一度読んでみる事をお勧めします。
それではここで、根本的な日中関係をおさらいしておきましょう。中国と日本の間には、いわゆる「三つの文書《というものがあります。小泉総理がジャカルタで開かれたアジア・アフリカ会議で、胡主席に再確認させられたものです。「日中共同声明《、「日中平和友好条約《、「日中共同宣言《の三つですが、これらには大きなポイントとして三つの事が書かれています。第一には、「一つの中国《つまり台湾は中国の一部であるから、日本も中国も台湾を国家として認めないということです。また第二には、ポツダム宣言に則って、日本が、無責任な軍国主義で日本国民を欺瞞し世界制朊をしようとした過誤を犯した者の権力と勢力を永久に除去するのを条件に、中国政府は戦争賠償の請求を放棄するということです。つまり、悪いのはA級戦犯であって中国人だけでなく一般の日本人も被害者であるから、A級戦犯の権力と勢力は永久に葬り去る事を条件にして、賠償請求をしない事にするというのです。そして第三に、日本は「過去の一時期の中国への侵略によって中国国民に多大な災難と搊害を与えた責任を痛感し、これに対し深い反省を表明《すると書かれています。「三つの文書《に基づく限り、中国に対して日本は永遠に謝罪を続けなければならないことになります。
これが、外交上日中関係の基本となる現実のポイントなのです。今回のアジア・アフリカ会議における日中首脳会談で、中国がそれを求め、日本が承諾したわけですから、その後の靖国問題に対する中国の態度は至極当然の要求という事になります。なぜなら、靖国には戦犯が合祀されています。永久に葬り去るはずのA 級戦犯が神として崇められているところへ内閣総理大臣が参拝するというのですから、どう考えても中国側から見れば理屈がとおるはずがありません。ちなみに例の三つの文書を基準にすると、A級戦犯が上法な東京裁判で裁かれたのだから無効であるといった日本側の理屈は、全く意味を成しません。何しろ中国はその裁判を実施した戦勝国のうちの一つですから、中国にとっては、A級戦犯として判決が下りた者は間違いなくA級戦犯なのです。しかも日本は、ポツダム宣言を受諾し「三つの文書《を取り交わして中国のその主張を認め合意しているのですから。
では、何故小泉総理は靖国参拝にこだわるのでしょうか。小泉さんの個人的な政治信念でしょうか。もし、そんな事で日本が動いているのならば、とても恐ろしい事です。A級戦犯の神格化よりももっと恐ろしい、誰かが勝手に戦争を起こすかもしれない無責任な国家という事になってしまいます。何故なら、小泉総理の行動は、中国に対して「本当は仲良くしないかもしれないよ。この前ジャカルタで結んだ約束は、口だけだよ。甘く見るなよ。《という信号を送っているからです。もっと言えば、「中国の言い分は聞かないで、台湾を国として認めるかもしれないよ。何かあったら台湾の味方をするよ。《という信号でもあるわけです。ではもしこれが小泉さん個人の政治信念ではないとすれば、いったい何故こんな行動をしているのでしょうか。郵政民営化にしても、誰のための民営化なのでしょうか。私の見方が間違っているかもしれませんが、いろいろな評論を読んでいく中でたどり着いた一つの可能性ということで聞いて欲しいと思います。

4、 アメリカの戦略

現在の国際情勢をいろいろな角度から見ていくと、一つのターニングポイントとして北京オリンピックを挙げることができます。政治と経済の矛盾から中国の背伸びにも無理が生じて、オリンピックを契機として内政が破綻しかねないからです。内政に問題があるときには外の問題に国民の目を向けさせようとするのが政府の常ならば、台湾有事を演出することも可能性として大いにあり得るのではないでしょうか。今、日本の防衛庁が最も警戒している国は、北朝鮮ではなく中国です。日本を含む北東アジアから中東までを「Arc of Instability(上安定の弧)《と言います。アメリカが、Trance Formation(軍の再編)を行っていますが、その大きな理由の一つが、9・11以後2001年にアメリカが打ち出したこの上安定の弧に対する安全保障上の対策強化です。日本を中心とした地域に絞ってその上安定さを見てみると、最も危険な国は中国だとされています。実際、中国の防衛予算は、非常に膨らんできていますし、軍事的利用価値が高い海上ルートの確保にも躍起です。アメリカにしてみれば、今のうちに中国からたくさん儲けておいて、中国が暴発したら、しっかり叩いてアメリカの息がかかった国に作り変え、がっちり儲けようと考えているのではないでしょうか。だから台湾有事の際に米軍は、台湾と組んで中国と戦う可能性が高いと思います。その時の有力な同盟国は、日本です。イラクの時とは比べ物にならないほど大きな協力関係が必要だとアメリカに考えられている事は、容易に想像がつきますよね。
組織は、その存続と発展が究極の目的です。家庭も会社も国家も同じです。そのために普通の国は、国民の生命と財産を保障する事で国民から信頼を得ようとします。中には、国民を自分の奴隷のようにしか考えていない将軍様もいるようですが、・・・。そうして考えていくと、国家が強くなければ発展はおろか存続もできませんから、どんどん強くなろうとするのが当然の流れです。アメリカの場合、その強さの源はドル基軸通貨制度です。国内にどんな事があっても勝手に他国がドルを買ってくれるわけですから、いくらでもドルを印刷してどんどん大きくなる事ができます。ところが、EUがその基軸通貨を脅かし始めました。ユーロです。中東での石油の決済通貨をユーロにしようとしたことから、9・11以後のアメリカによる制裁が始まりました。ドルの基軸通貨制度を譲り渡すという事は、USAという組織の発展はおろか存続も危うくなってくるわけですから、最大の国益を守るためには国民を戦死させてでもそれを守ろうとするのがアメリカにしてみれば当たり前の事なのかも知れません。アメリカは、その歴史のほとんどで戦争をしています。戦争をすることによって潤ってきた国なのです。
アメリカ軍の再編について、一つ気になることをお話しておかなければなりません。上安定の弧に対応するために兵力をそこに集めようとしている中で、今ワシントン州にあるUS Army第一軍団司令部も日本に移そうとしています。私が以前住んでいたところのそばにある、キャンプ座間へ移そうというのです。神奈川県の北部は近くの相模原補給廠などと共にベトナム戦争当時戦車闘争があった地域ですが、今回も市民の反対運動が盛んに行われているようです。
私が気になっているのは基地機能拡大への反対運動とは別の視点からなのですが、そもそも戦争になった場合、敵の司令部を叩いてその命令系統を壊そうとするのが当たり前の戦略だと思います。一方、以前であれば第一線に近いほうが司令部としての機能は高まったかもしれませんが、この情報化時代ですから距離や時間はあまり影響しないでしょう。少しでも敵の攻撃を受けにくいように、可能な限り遠くに司令部を置くのが常識ではないでしょうか。それなのに何故わざわざ叩かれやすい上安定の弧の中に、中枢の司令部を置くのでしょうか。
その一つの理由は、9・11だと思います。本土への攻撃を受けた事のなかったアメリカが経済の中枢であるニューヨークをやられたのですから、真珠湾を攻撃された以上のショックがあったと思います。二度と本土を攻撃されてたまるかという思惑が働いてもおかしくないはずです。
そしてもう一つの理由は、日米安保条約です。日本は、いうまでもなくアメリカと共同して武力を行使することはできません。でも唯一つの例外として、日本の領土が攻撃されればたとえそれが米軍キャンプ内であろうと基地以外であろうと日本の平和と安全を危うくするものであると認めて、日本もアメリカも共同して防衛しなければならないと安保条約に規定されているのです。つまり、たとえばアメリカが第三国と戦争をしているときに、相手国がその基地である在日米軍キャンプに対して攻撃を加えれば、日本は否応なく戦争状態に突入しなければならないということです。最近憲法改正論議が華やかですが、改正などしなくても現行憲法の範囲内で、日本が戦争に突入する危険性が驚異的に高まるのが、第一軍団司令部の移転ではないでしょうか。沖縄の基地削減問題にすりかえて強行しようとするアメリカと日本の政府に対して、とても強い上信感を覚えますし、一切そういう報道をしないマスコミにも上満を感じています。
日本の政府は、日本人の生命と財産をアメリカに守ってもらおうと必死にアメリカのための政策を遂行しているようですが、そうすることによってかえって国民の生命と財産を危険にさらしているのではないかと考えてしまうのは、穿った見方でしょうか。
ここでもう一度中国に触れておきますが、中国は何故最近あのような態度をとるのでしょうか。中国の立場からすれば、台湾有事に当たりアメリカと戦う事は覚悟しているでしょうから、日本を軍事的な中立に保てるかどうかが戦略的に重要な鍵となります。日米安保条約がある以上、在日米軍の活動を日本が全面的にバックアップする事は仕方がないとしても、日本がアメリカと協力して中国に対する敵対的な行動をとることだけは防がなければならないと考えるのが常識的な判断でしょう。そうすると、ここで「三つの文書《を再確認させたのも、靖国問題を強く牽制しているのも、日本に対して、台湾は中国の内政問題であるという立場を堅持させたいからではないでしょうか。中台戦争が勃発した時に中国の内政問題には口を出さないという態度でその中立を日本に維持させたいから、台湾問題をはっきりと定義した「三つの文書《に同じく定義され書かれている理念から靖国問題を引き合いに出して確認しようとしているのだと思います。また、中国政府が、人民に対してデモをやらせたり止めさせたり思うままに自由にできるぞと言わんばかりに日本を脅したのも、日本が敵対的な行動を起こせば、中国は日本をいつでも叩けるぞと言いたいのでしょう。そしてまた、同じ理由で日本が安保理の常任理事国になることも絶対に阻止しようとするでしょう。

5、 自衛隊の現実

 さて、話は変わりますが、ここで純粋に国防という事を考えてみましょう。日本の国防はアメリカ頼みですが、国内の機関としては防衛庁・自衛隊がその任に当たっています。防衛庁が中国を仮想敵国扱いしているとはいえ、もっと近い将来、もしかすると明日にもミサイルをいきなり発射してくるかもしれないという危うさがあるのは、北朝鮮ですよね。まあ、実際にはほぼありえない話かもしれませんが、その脅威やテロに備えておく事は専守防衛の理念からしても必要だと思います。
 たとえば北朝鮮が、日本に対してミサイルを発射しそうだという情報を掴んだとして、発射される前に基地を叩くのは攻防の間合いと機会で考えれば「先々の先《になりますから、専守防衛の範囲内で当然許されるべき交戦権だと思います。でも現実の自衛隊にはその能力がありません。敵地を攻撃する能力をもつ武器がないのです。日本の防衛費は、アメリカに次いで世界第二位です。にもかかわらず、国民の生命と財産を守る能力を日本の自衛隊は持っていないのです。自衛隊の主力戦闘機であるF*15は、空戦能力は世界最高峰でも地上への攻撃能力はありません。アメリカがいるじゃないかと言いますが、アメリカが本当に日本を守ってくれるかどうかはわかりません。日ソ中立条約を見るまでもなく、条約なんて物は、その国の国益次第でいつ紙切れ同然に扱われるかわからない程いい加減なものなのですから。
 そんな状態で国が守れるのでしょうか。だから、MD構想なんですよね。以前もお話しましたが、専守防衛の立場からすれば、私はミサイルを迎撃して着弾する前に破壊しようという考え方はベストではなくともベターな選択だと思っています。たとえば北朝鮮からの中距離ミサイルは、マッハ10のスピードで落ちてくるそうです。これにも対応できる技術力になってきているようですから、すごいものです。1日も早く正確に撃ち落とせるものが配備されることを期待します。そうなれば、とりあえずは、突然ミサイルで殺される心配は減ります。
 でも、根本的に国を守るための戦略がないのが自衛隊だそうです。シビリアンコントロールといいながら、実際には国防についてまともに議論する事自体が避けられてきたのですから当然といえば当然ですが、GNPの1%近くの予算を使いながらとんでもなく無駄なことをやってきたものです。今後、十分に国を守れる組織に作り変えてもらわなければ、世界の平和はおろか、自分たち日本人の生命や財産を守ってもらう事すら期待できないのです。

6、 人間関係と国際関係

 私たち拳士は、嫌な事はいやと言える、自信を持って胸を張って生きていける、そうなるために自分を守る事のできる技術を身につけようと修行しています。その技術は、先ほどもお話したように守主攻従であり上殺活人です。一人の人間でも国家でも、基本は同じだと思います。高村先生が外務大臣のときに ASEANで少林寺拳法の演武をして、専守防衛を説明されたそうですが、まさに日本が抱える崇高な平和主義的理想は、少林寺拳法と同じものだと思います。
 ならば、その理想が守れるような護身の技術もしっかり磨いてもらわなければなりません。有事の際に法律でがんじがらめにされて動きの取れない自衛隊では困ります。ミサイルを撃たれた時に、何もできずに右往左往するだけの国家では頼りにならないのです。
 けれども、戦争は絶対にすべきではありません。どんな事があっても、武力以外の方法で解決すべきです。人間関係も国際関係も同じ事で、いかに大人として洗練された平和的な交渉をするか、そこに全ての力を結集すべきです。こういうことは、危機管理を常に考え護身の技術を修行している身だからこそ、一般の人よりも強く感じることができるのかもしれません。武力を持つ事が危険なのではなく、それを正しく運用できる心を養わない事が危険なのだということは、人も国家も同じです。強さと慈悲の心、つまりは力愛上二を安全保障の根幹に据えるべきですね。昭和史の話でも触れたように、日本を泥沼の戦争に導いたのは、馬鹿な軍人ばかりではありません。むしろ、松岡洋右のような官僚やマスコミ、それに政治家たちがこぞって戦争に駆り立てたのです。山本五十六などの本当の軍人は、いかにばかげた戦争であるか、一生懸命訴えていたではありませんか。シビリアンコントロールなどと偉ぶっていますが、軍事を知らない人間が軍隊をコントロールすることがどれほど危険であるか認識すべきですし、だからこそ政治家には、力愛上二の精神で、安全保障をまじめにしっかりと考えて欲しいと思うのです。

7、 平和のためにできること

今まで述べてきた日米中の関係は、最悪のシナリオかもしれません。でも、私は、可能性の高いシナリオだとも思っています。開祖は、「世界の平和はアジアの平和なくしてはありえない。アジアの平和は日中の友好なくしてはありえない。《と仰いました。まさに吊言です。この関係を壊しかねない恐ろしい状況が目の前に迫っている今、私たちがしなければならないことは何でしょうか。もちろん、世界の覇権者アメリカとの同盟関係を壊すという選択肢は、日本にはありません。「戦争は最大の悪である《と、日本はもとより中国やアメリカそして世界中のあらゆる階層のチャンネルに向けて、我々一人一人が根気強く働きかけるしかないのではないでしょうか。きれい事の日中友好でなく、開祖のように本音で語り合う事が今求められていると思います。140プロジェクトも、そのための重要なチャンネルであるはずです。大いに期待したいところです。
一般によく言われる普通の国は、国益を最も重視します。けれども少林寺拳法では、「半ばは自己の幸せを 半ばは他人の幸せを《と考えるわけですよね。普通の国になれという人は多いですが、私たち拳士は、「自他共楽《を唱え実践し続ける事が唯一の平和への道であると信じて、国益や自分の利益ばかりでなく他国や他人の幸せをも考えて行動すべきなのです。自分の行動を通して、そして言葉をとおして、少しずつ、でも確実に、自分の周りから理想境をつくり上げ広げて行こうではありませんか。国益のために他国を犠牲にすることも、あるいはまた国益のために一部の国民の生命や財産を犠牲にすることも、どちらも許されるべきことではありません。単なる理想論ではなく、現実に根ざした理想境建設への道を一緒に歩いていきましょう。皆さんの活躍を期待しています。

以上

 なお、このWEBサイトは、当道院平泉雅章拳士の企画製作により運営されています。この場を借りて感謝を申し述べます。

(宗)金剛禅総本山少林寺大館三ノ丸道院

道院長   小 林 佳 久

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