時 事 法 談 (30)

「幸福運動について」

2002年9月3日

大館三ノ丸道院専有道場にて

合掌

 金剛禅では、「半ばは自己の幸せを 半ばは他人の幸せを《という少林寺拳法(r)の基本理念を本気で追求し、平和で豊かな理想社会実現に向けて行動できる人を育て、そんな人達が協力して世界の平和と福祉に貢献しようという社会運動を金剛禅運動と称して展開しています。
 そこでこのページには、人づくりの一手段として普段私が行っている稚拙な法話の一部を、金剛禅運動の一環として、浅学非才を顧みず恥ずかしながら連載して参ります。(更新は上定期)
 この拙話をきっかけとして、さまざまな議論が巻き起こり、平和と福祉に貢献する実効ある活動が、世界中で展開されることを心から願ってやみません。皆様のご意見ご感想をお寄せ下さい。

結手

さて、今回は「幸福運動について《お話します。

1、幸せは縁で決まる

 私は2001年の正月に、「半ばは自己の幸せを 半ばは他人の幸せを《と題した話をしました。そのなかで、人それぞれの幸せ観を大切にして幸せになろうと呼びかけました。 今日は、開祖の幸せ観を追求してみたいと思います。開祖は、『少林寺拳法入門』の中で「本当の幸福とは、自分の周囲に、信じあい、助けあえるすばらしい人間関係=縁がどれだけ張りめぐらされているかによって決まるものだと私は考えている。《と述べておられます。また、1969年10月の第三次指導者講習会では、「日本では万葉時代以来、しあわせというのは人偏に士、仕える、仕え合うと書いたのです。しあわせということは、仕え合う気持ちができた時にだけ成立するのですよ。仕え合うということは、与え合うことなのだ。自分の幸せ、子供の幸せ、亭主の幸せ、彼女の幸せ、みんなここへつながる。《と仰っています。そして、1975年8月の大学合宿では、「どういうときに本当の幸せを感じるかというと、頼れるよき友達を得た時である。君たち、あいつのためなら今の仕事を棒に振ってもいい、何をしてもいいと思うような友達を何人持っているだろうか。また、何かあったときに君たちのために自分を犠牲にしてでも来てくれる、すばらしい友人を何人もっておるだろうかな。《と問い掛けてもいらっしゃいます。 人間という生き物は、仙人でもない限り、たった一人では生きていけない動物です。今日の食事も一体どれだけ多くの人の手がかかっているでしょうか。たとえ、朝起きてから夜寝るまで誰とも口をきかず、一歩も外に出ず、何も食べなかったとしても、電気も上下水道も、何もかもみんな人の手によって成り立っています。まして社会生活を営めば、必ず他人との関係が生まれますね。人はその人生をどう歩むかということと同じように、誰と歩むかがとても大切な事なのです。「すべての事が人によって行なわれるとすれば、その人の質によって結果が大きく変わる《ということを開祖は発見されました。「人・人・人 全ては人の質にある」ということです。だから、どんな人と係わり合い、どんな人と手を取り合って生きていくかによって、人の幸せが決まるのです。 何かあったとき、そこに良いパートナーがいれば、悲しみは半分になるし、喜びは二倊になりますよね。これこそが絆のすばらしさであり、まさに幸せを噛みしめる瞬間ではないでしょうか。私自身、どれだけの人から、どれだけ多くの悲しみを和らげてもらい、どれだけ多くの喜びを何倊にもしてもらったか、数え切れないほどです。本当に私は幸せ者だと思います。

2、良い縁を育てるためには

 皆さんはきっとすばらしい絆を築いていらっしゃる事と思いますが、まだそういう絆が築けていないと言う人もいるかもしれません。そこで、良い縁を育て、絆を築いて行くためにはどうしたらよいか、少しお話したいと思います。 まず、他人から良くしてもらおうと思うのならば、先に他人に良くしてあげる事です。自分が逆小手をうまくなるために数多く練習したいのならば、相手が先にうまくなるように何度でも手をとってあげることが大切ですよね。自分だけ出来れば相手のことはどうでも良いという態度では、誰も相手をしてくれなくなってしまいます。結果的に、うまくなれないのです。 多くの人の中には、他人から好かれるタイプの人と、嫌われやすいタイプの人がありますね。どんな人が一般的に嫌われやすいでしょうか。マナーが悪い奴であったり、信用できない奴であったり、頼りにならない奴であったり、俺が俺がと言う奴であったり、モラルの低い奴であったりするでしょう。逆に好かれるようになるためには、自ら信頼される人間になることだと思います。そうすれば、きっと良い縁がたくさん育つはずです。

3、信条の実践

 私たちが徳を身に付け信頼される人間になるために、開祖は信条という形でその生き方を教えてくださいました。魂をダーマから受け、身体を父母から受けたことに感謝して、報恩の誠を尽くす事。愛民愛郷の精神にのっとり、世界の平和と福祉に貢献しようと努力する事。正義を愛し、人道を重んじ、礼儀を正し、平和を守る真の勇者になる事。法を修め、身心を練磨し、同志親しみあい助け合い譲り合って、協力して、理想境建設に邁進する事。これらのことを実践すれば、必ず徳が身につき、人の信頼を得る事が出来るでしょう。そうなれば自然に良い縁が育まれているはずです。

4、半ばは自己の幸せを 半ばは他人の幸せを

 自分の幸せだけを考え、それをエゴイスティックにどこまでも追求していくと、自ずと他人と調和した生き方をせざるを得ません。結果的に自他共楽の生き方をすることが必然なのです。そう考えれば、この道の初心者は、自分個人の幸せだけのために、あえて見返りを求めて他人の幸せを願うということから入っても一向に問題ありません。そのうち他人につくす事が習慣になってくると、きっと見返りを求めず純粋に他人の喜びを自分の喜びとすることが出来るようになるでしょう。そうなれば、自分の幸せと他人の幸せを並立して考えるようになっているはずです。

5、金剛禅運動

 いま、世界では多くの国が、自国の国益だけを考えて外交を展開し、戦争や紛争を発生させています。でも、本当に国益を考えるならば、他の国の国益も充分に尊重しない限り、結果的に自分の国の国益を搊なう事になるはずです。こんな小学生でもわかる理屈が、いまだに世界の指導者には理解できないのでしょうか。
 自分の幸せの追求が、社会の幸せ追及に展開されるのは当然の帰結です。その考え方を広め、一人でも多くの人がそのように生きて幸せになろうというのが、少林寺の幸福運動であり、金剛禅運動なのです。拳士の皆さんは、自己確立と自他共楽の修練に励むとともに、自信と誇りを持って布教活動に邁進していただきたいと思います。

以上

 なお、このWEBサイトは、当道院平泉雅章拳士の企画製作により運営されています。この場を借りて感謝を申し述べます。

(宗)金剛禅総本山少林寺大館三ノ丸道院

道院長   小 林 佳 久

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