時 事 法 談 (25)

「教典を噛みしめる」

2002年4月2日

大館三ノ丸道院専有道場にて

合掌

 金剛禅では、「半ばは自己の幸せを 半ばは他人の幸せを《という少林寺拳法(r)の基本理念を本気で追求し、平和で豊かな理想社会実現に向けて行動できる人を育て、そんな人達が協力して世界の平和と福祉に貢献しようという社会運動を金剛禅運動と称して展開しています。
 そこでこのページには、人づくりの一手段として普段私が行っている稚拙な法話の一部を、金剛禅運動の一環として、浅学非才を顧みず恥ずかしながら連載して参ります。(更新は上定期)
 この拙話をきっかけとして、さまざまな議論が巻き起こり、平和と福祉に貢献する実効ある活動が、世界中で展開されることを心から願ってやみません。皆様のご意見ご感想をお寄せ下さい。

結手

さて、今回は「教典を噛みしめる《ということについてお話します。

1、世界の現実

 日本のワイドショーでは、平和ボケした井戸端会議の話題提供のためなのか、低レベルな国会議員の問題で持ちきりですが、世界を見渡すと、平和で豊かな理想の社会とは全く反対の方向へ動いているように思えて仕方がありません。たとえば、イスラエルとパレスチナの情勢が極度に悪化していますね。ブッシュ大統領が演説の中でも言っていましたが、和平が実現しそうになるとパレスチナの自爆テロが発生して、その努力が水の泡になってしまうということが何度も繰り返されてきましたし、イスラエルの暴力的対応とがあいまって、いまや最悪の状況にあります。ブッシュ大統領は、「平和的解決のために、パレスチナ人は、テロリスト・アクティビティーをやめなければならない《と力説していましたが、同時にイスラエル政府も力で押さえつける政策を改めなければならないと、私は思います。ただしそうはいっても、互いの恨みがここまで募ってくると、市民感情として、全てを忘れて半ばは他人の幸せを考えるなどというわけにはいかないのが、現実なのでしょう。

2、世界の平和と福祉に貢献する?

 そんな世界の中に、今私達拳士も、まぎれもなく生きているのです。平和ボケした日本で、開祖の志を現在に生かし、世界の平和と福祉に貢献するという使命が、とても重くのしかかってきますね。

3、金剛禅運動について

 それでも私達は、正直者がバカを見ない、平和で豊かな理想の社会を築く事を目的とした、金剛禅運動を行なっています。開祖は、「金剛禅運動は、金剛禅思想を身につけた同志を育てることをとおして、拳士信条を実践する運動である。したがって、それは心身の改造をはかる人づくりの教育運動であり、日本人相互の間に人間尊重の精神に根ざす真の連帯を確立せんとする愛民・愛郷の愛国運動であり、総じて自他ともに真の幸福を追求する幸福運動であり、究極的には現世に理想境を建設することを目指す社会運動である。《と定義されました。

4、門信徒の生き方を記した教典

 この運動体としての教団に籍を置く我々門信徒は、深くダーマを信仰し、その生き方を記された教典にもとづいた生活をしなければなりません。イスラム教徒の生活を見れば分かるとおり、敬虔な信者ならば、それぞれの信仰にもとづいて教典に則った生活をするのが当然のことなのです。世界の常識から見れば、信仰に生きるとはそういうことだと思います。 さて、その教典ですが、金剛禅では、経典といわず教典といいます。一般に、経典と教典は同義語であるともいわれていますが、経典は釈尊の教えをそのままに伝えようとしたものであるのに対して、教典は、開祖が金剛禅という全く新しい宗教を伝えるために、その教えを記したものなのです。 教典の最初で唱和する「聖句《は、金剛禅の実践論であり、その原則が示されたものです。「法句経(ダンマパダ)《の中から開祖が選ばれたもので、「自己の主は自己のみである《という根本仏教の核心が、端的に言い表されています。金剛禅門信徒にとって、基本的かつ最も重要な教えの一つなのです。人の霊止たる我を見つめ、自らの可能性を発現するよう努力して、自己確立を目指そうという開祖の思いそのものです。 次の「誓願《は、日々の修行に向かう心構えであり、信念の表明です。ここでは青幇のような組織での調和的人間関係に対する誓いも立てています。
「礼拝詞《は、大霊力ダーマへの帰依の表現であり、ダーマの分霊としてこの世に生かされてあることの喜びと、霊止として、より良く生きようとの誓いでもあります。この「礼拝詞《こそが宗教としての教典であり、我々金剛禅門信徒にとっては、正依の教典とも言うべき重みと深みのある重要なものです。特に、「願わくば良き導きと加護を垂れさせ給え。 南無ダーマ《については、「大いなるダーマの力が、ひとり私のみならず、生きとし生けるもの皆に、等しく注がれることを乞い願います。 ダーマの存在と、私がダーマに生かされてあることを心より信じます。《と訳すことができます。
「道訓《は、金剛禅運動の実践綱領ともいうべきもので、「天《と「人《とのつながりを踏まえて、霊止としてどう行動すべきかを事細かく説かれているのです。
「信条《は、教えを固く信じ、それを実践することを心に誓うためのもので、実践の大要ともいえます。開祖の思いとして、「拳士たるもの、こうあれ《と示されたものなのです。

5、鎮魂行

 金剛禅の修行は、「拳禅一如《です。主行である易筋行は、外修に区分されていますが、鎮魂行は、内修です。教典を唱えて、教えに心を向け、自らの行いを省みることが大切です。積極的なものとして調息や座禅と位置付けられていますが、同時に、消極的なものとしての反省行や持戒行にもあたるのです。教典を噛みしめて、それぞれが自らの生き方に反映させていきましょう。

6、 道院・小教区が一致協力して理想境建設に邁進する

 日本という恵まれた環境の中にあってさえ、自己確立や自他共楽を実践することは、とても難しいことですね。でも、その道を自ら切り開いて行く姿勢があって始めて、他の国の人たちから信頼と尊敬を得る事ができるようになるのではないでしょうか。そんな生き方をすることによって、例えば中東の人たちに対しても、説得力をもって、「半ばは他人の幸せを考えて、恨みをこえて平和で豊かな国をつくろうよ《と呼びかけることができるのではないでしょうか。 もちろん同時に、今彼らに対してできることを、私たちができるところから貢献するのも大切です。いずれにしても、道院そして小教区の門信徒が共に修行に励み、一致団結して金剛禅運動に邁進したいと考えています。 教区制に移行した今年度、今まで以上によろしくお願いします。

以上

 なお、このWEBサイトは、当道院平泉雅章拳士の企画製作により運営されています。この場を借りて感謝を申し述べます。

(宗)金剛禅総本山少林寺大館三ノ丸道院

道院長   小 林 佳 久

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