時 事 法 談 (4)

「「開祖デー《における挨拶」

2000年6月10日

大館三ノ丸道院専有道場にて

合掌

 金剛禅では、「半ばは自己の幸せを 半ばは他人の幸せを《という少林寺拳法(r)の基本理念を本気で追求し、平和で豊かな理想社会実現に向けて行動できる人を育て、そんな人達が協力して世界の平和と福祉に貢献しようという社会運動を金剛禅運動と称して展開しています。
 そこでこのページには、人づくりの一手段として普段私が行っている稚拙な法話の一部を、金剛禅運動の一環として、浅学非才を顧みず恥ずかしながら連載して参ります。(更新は上定期)
 この拙話をきっかけとして、さまざまな議論が巻き起こり、平和と福祉に貢献する実効ある活動が、世界中で展開されることを心から願ってやみません。皆様のご意見ご感想をお寄せ下さい。

結手

さて、今回は支部が主催した「開祖デー」での挨拶を転載します。



少林寺拳法「開祖デー《2000 

GYOZA & 少林寺拳法 体験

(財)少林寺拳法連盟大館三ノ丸支部

支部長      小 林 佳 久

ご 挨 拶

 本日は、朝早くからお集まりいただきありがとうございます。

 さて、今日は少林寺拳法「開祖デー」2000 ということで、一体「開祖デー《ってなんだろうというところからお話をしたいと思います。
 私たちの少林寺拳法は、第二次世界大戦後中国から帰国した開祖宗道臣によって創始された日本の武道です。開祖は、戦時中、中国各地で拳法の技術を学び、河南省の嵩山少林寺というところでその法灯を継ぐ儀式を受けてきました。まあ、当時は、素手で戦う技術の免許皆伝になったからといって、自動小銃で戦争されていた時代ですから、特に嬉しくもなかったと言っていますが。 ただ、敗戦により帰国してみると日本は荒れ野原で、道義も人情もない弱肉強食の修羅場になっていたわけです。そこで、このままでは日本の国が潰れてしまうと考え、若者を集めて日本をもう一度立て直そうと、説教をはじめたのです。けれども説教だけではなかなか人がついてこないので、ふと、自分が若い頃夢中になった拳法の技術を教えながら道を説こうと考えて、「少林寺拳法《を創始されました。昭和22年のことです。 その開祖が昭和55 年5月に亡くなりました。その命日を記念して、少林寺拳法の拳士が、地球規模で社会貢献活動を行なおうと設定された日が、「開祖デー」です。私たち大館三ノ丸支部では、「昔の遊びを年長者から習おう《ということで、市民各層に呼びかけ100人程度の規模で去年まで実施してきましたが、今年からは、「GYOZA & 少林寺拳法 体験《という事に改めて実施することにしました。餃子の本場は中国です。少林寺のルーツも中国です。このつながりで単純に結びつけたわけです。 今回のこの企画が実行できるのは、ひとえに中国語会話サークル「星の会《の皆さんと吉田先生のおかげです。本場中国の餃子を教えていただける先生をご紹介します。 吉田春樺(chun hua)先生です。吉田先生は、台湾で日本語教師としてご活躍されていましたが、12年前に来日され、素敵な方とめぐり合われご結婚されて、現在合川町にお住まいになっています。馴れ初めなどについては、後でゆっくりお聞かせいただこうと思います。
 中国では、ご存知のとおり現在中華人民共和国と台湾との間で政治的問題を抱えていますが、われわれ日本民族にとって大切な隣人であることに変わりはありません。開祖は、平和で豊かな社会を築くために少林寺拳法を創始されましたが、こんな言葉を残しています。「世界の平和はアジアの平和なくしてはあり得ない。アジアの平和は、日中の友好なくしてはあり得ない《と。両国民族にとって悲しい時代はありましたが、これからは相互理解と協力によって世界の平和を築くよう努力していかなければなりません。 世界に目をやると、各地で紛争が絶えません。
 そんななかで、たとえばコソボとチェチェンの問題を見ると、国際世論や国際政治の対応に大きな違いが見られます。問題の本質は同じような人権問題であるにもかかわらず、NATOによる空爆で介入したコソボと、ロシアのやりたいままに任せてしまうチェチェン。この違いは、イデオロギーや宗教や道徳よりも、国家や民族の利害のほうが優先し、まるで力だけが正義であるかのような厳しい国際政治の現実によるものであることは明らかです。 また、シエラレオネをみてみると、宗教指導者が紛争を解決しかけていたかに見えましたが、やはり人を動かすのは宗教よりも恨みや憎しみといった至極個人的なことによることがはっきりします。 でも、よく考えてみると、政治も軍事も教育も全てのことは人によって行なわれています。全てが人によって行なわれる限り、その立場にあるひとの質によって大きく結果が変わるのです。「人・人・人 全ては人の質にある《このことを開祖は、体験から導き出されました。 最近は、少年による犯罪が毎日報道されており、「17 歳《というキーワードをマスコミは作り上げていますが、17歳であることに大きな問題があるのではなく、その個人がどのように育ち、何を考えどう行動したかが問題なのです。一人一人が、正しい価値観を持ち、社会に貢献する人間になるよう育てることこそが、大人に与えられた使命であり、われわれ少林寺拳法が目指す道なのです。
 さて、皆さんお一人お一人を拝見すると、色々な方がいらっしゃいます。違う民族である中国の方、年齢や性別の違い、それに障害をお持ちの方もいらっしゃいます。見た目だけではありません。それぞれのお考えや好みまでみんな一人一人違うはずです。 みんなが違ってあたりまえなのです。そんな中で人間は、誰よりも自分が一番かわいいはずです。その自分を本当に大切にすることが、まずとても重要なことです。 でも、みんな同じ人間です。同じように大切な命を受けた人なのです。だから、自分さえ良ければいいというのは間違いです。他の人も自分と同じ命を受けた存在としてとても大切な生命を生きているんです。この個性の違いと、みんなに共通する命。ここのところを世界中の人が心底理解し本気で大切にするようになったら、戦争なんか起こるはずがないじゃないですか。自分の幸せを本気で追求するが、他のひとの幸せも大切にする、そのことを開祖は、「半ばは自己の幸せを 半ばは他人の幸せを《といって、50年以上前から説きつづけてきました。少林寺拳法は、これからもずっと、このことを説きつづけていきます。 今日は、みんなで餃子を作りながら争いではなく協力をしていくことの楽しさを味わい、おいしい餃子も一緒に味わいたいと思います。
 また、他人の幸せを大切にするためには、強さと優しさが必要です。強さとは、表面的な腕っ節の強さではなく、自分自身を信じられることつまり自信を持つことから生まれます。その自信を育てるために修行している少林寺拳法の技術を皆さんにも体験していただきます。この技術は、護身の技術としても大変優れたものですので、是非とも楽しみながら覚えて帰っていただきたいと思います。 それでは、お昼まで楽しく過ごしましょう。怪我なく有意義な交流の場になることを願ってご挨拶と致します。

以上

 なお、このWEBサイトは、当道院平泉雅章拳士の企画製作により運営されています。この場を借りて感謝を申し述べます。

(宗)金剛禅総本山少林寺大館三ノ丸道院

道院長   小 林 佳 久

 ご意見・ご感想は大館三ノ丸道院長、または大館三ノ丸支部ホームページの「拳士のひろば《へお願いします。