時 事 法 談 (1)

「「キレる《原因は平常心の欠如にある」

1999年11月30日

大館三ノ丸道院専有道場にて

合掌

 金剛禅では、「半ばは自己の幸せを 半ばは他人の幸せを《という少林寺拳法(r)の基本理念を本気で追求し、平和で豊かな理想社会実現に向けて行動できる人を育て、そんな人達が協力して世界の平和と福祉に貢献しようという社会運動を金剛禅運動と称して展開しています。
 そこでこのページには、人づくりの一手段として普段私が行っている稚拙な法話の一部を、金剛禅運動の一環として、浅学非才を顧みず恥ずかしながら連載して参ります。(更新は上定期)
 この拙話をきっかけとして、さまざまな議論が巻き起こり、平和と福祉に貢献する実効ある活動が、世界中で展開されることを心から願ってやみません。皆様のご意見ご感想をお寄せ下さい。

結手

さて、今回は「キレる《ということについて考えてみたいと思います。

1、誰でも持っている「良心《

 最近「キレる《という言葉をよく聞きます。 この「キレて《しまって、問題を起こした人達のほとんどは、おとなしくまじめで良い人だったという評価がなされていた人です。ごく普通の人がとんでもない事件を起こすということから、奇異な出来事であるかのように報道されています。 でも、それは奇異で特別なことなのでしょうか。人は誰でも人間だけに備わった「良心《を持っています。それを「魂《、「ダーマの分霊《といいます。ただ、精神修養をしないとその「良心《を発揮することが難しいのです。

2、喜怒哀楽の感情

 人間を含めた全ての動物が持つ心を、「魄《といいます。喜怒哀楽といわれるような感情の心です。この心は、周囲の環境や他人の言動などあらゆる事に反応してすぐに動揺します。いやなことを言われれば怒りの心が頭をもたげ、その怒りによって恨みや妬みなどを生み出すものです。(自ら発する言動が他人を傷つけるかもしれないことを常に頭において、相手の立場に立った生き方を心がけたいものです。) けれども、喜怒哀楽の感情を表にだせる人ほど好かれるのも事実です。犬でも、いじめれば吠えたり噛み付くが、頭をなでると喜んでしっぽを振るからかわいいのです。ポーカーフェイスを気取らず、嬉しい時に全身で喜びを表現し、悲しい時に涙を流す人は、とても魅力的に見えるものです。

3、「平常心《を育てる

 あらゆる現象に反応し、喜怒哀楽を表現するのは良いのですが、この感情に支配された行動をとると、場合によっては「キレた《と表現される状態になります。 つまり、普段の気持ちである平常心を失うと、普段誰でもが持っている「良心《が発揮されず、感情のおもむくままに行動してしまうのです。 常に正しい行動がとれるようになるためには、「魄《を修め「魂(ダーマの分霊)《(「半ばは自己の幸せを 半ばは他人の幸せを《という理念)を養うだけでなく、平常心を育てる修行が必要です。現代の教育制度の問題は、まさにそこにあります。「心の教育《を叫びながらも、「魄《を修め「魂《を養い平常心を育てる教育は、あまり行われていないのが現状なのです。 けれども開祖は、50年以上も前から少林寺拳法をとおして「心の教育《を実践してこられました。開祖は、平常心を育てるためには、「心が動揺しやすい環境に積極的に自らを置くことによってその環境に慣れることが大切である《と説かれています。大会や乱捕において緊張することから開放されたり、鎮魂行の瞑目調息において邪念が出現しないようになることで、少しづつ平常心が育つのです。また、「易筋行(拳法)の修行によって、自信を身につけ心に余裕を持つことでも平常心は育つ《ともいわれています。 人づくりの手段である少林寺拳法という修行法を最大限に活用して、拳士一人一人が自らを大いに高めて欲しいと願っています。

以上

 なお、このWEBサイトは、当道院平泉雅章拳士の企画製作により運営されています。この場を借りて感謝を申し述べます。

(宗)金剛禅総本山少林寺大館三ノ丸道院

道院長   小 林 佳 久

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