森吉山の紹介

概 要

初夏、小又川と清藍さを競う 早朝、シルエットの共演(四季美橋にて)
 秋田県の中央東部にそびえる森吉山(1,454m)は、森吉町と阿仁町にまたがる
約20キロ四方の山域で,昭和43年に約15,000haが県立自然公園に指定された。
 向岳(1,454m)を山頂とする、一の腰、前岳、石森、カンバ森、ヒバクラ岳などの標高1,200m以上の外輪山に囲まれた独立峰である。
 山頂に立てば鳥海山、秋田駒、乳頭山、岩手山、八幡平、八甲田、岩木山、白神山地、男鹿半島、日本海などの大パノラマを望むことができる。
山腹はブナ林が広がり、標高1,000m付近からオオシラビソ林となり、山頂にかけての、かん木林に点在する雪田に高山植物が咲き誇る「花の百名山」として親しまれている。
 北東麓を「奥森吉」、南東麓を「奥阿仁」と呼び、標高400〜900mの起伏に富んだ原生林を集水域とする火砕流台地には、太平湖や神秘の小又峡、赤水渓谷、特に桃洞渓谷の源流部に群生する国天然記念物の桃洞・佐渡杉、日本の滝百選の安滝や立又渓谷など深いU字状の渓谷と渓流、数多くの名瀑群が連続する桃源郷が広がっている。

形成史

玉川溶結凝灰岩類の砕流大地を形成する奥森吉 山体を中心に径3kmのカルデラを形成
 森吉山周辺は、新第三紀の地層から成る標高400〜600mのきわめて険しい山地を形成している。
 特に森吉山東部のブナ森(標高1,015m)周辺は、玉川溶結凝灰岩類が標高400〜1,000mの火砕流大地を形成している。
 森吉山は、これらを基盤にして形成した第四期の火山であり、山体を中心に径3kmのカルデラを有する成層型の楯状火山(村山 磐:1973、火山の活動と地形、大明堂)である。
 森吉山山頂である向岳中央火口丘(標高1,454m)を中心に、一ノ腰(標高1,264m)、前岳(標高1,308m)、カンバ森(標高1,187m)、ヒバクラ岳(標高1,245m)小池ガ原(標高1,280m)の外輪山を有し、外輪山の山腹には緩傾斜平坦地が分布している。
 外輪山のヒバクラ岳と小池ガ原の東側は急壁を成し、その山腹には山体崩壊に伴う泥流が作った小起状の平坦面や寄生火山である立ガ森(標高1,031m)が分布している。
 森吉山の形成史は、地形学的に見た場合、カルデラ形成以前の成層火山体形成期を第一期活動。
 カルデラ形成以後のカルデラ縁側火山体(小池ガ原、ヒバクラ岳熔岩円頂丘)と向岳中央火口丘形成期を第二期活動。
 そして、小池ヶ原、ヒバクラ岳東側の山体崩壊に伴うノロ川周辺の泥流地形、立ヶ森熔岩円頂丘形成期の第三期活動に分けることができる。

1.第一期活動

前岳(森吉神社)から山頂を望む
 森吉山の火災噴出物は、玉川溶結凝灰岩や新第三紀の地層を基盤にして、20種類以上の熔岩火山砕屑物で構成されている(中川光弘:1983 岩石鉱物鉱床学会誌 第78巻)。
 玉川溶結凝灰岩は、フィッショントラック法による年代測定により、約200万年前に形成されたと考えられる。このことから、森吉山の形成はそれ以降ということになるであろう。
 第一期の活動は、多くの熔岩、火山砕屑物を交互に噴出し、それらを四方八方に堆積し、成層火山を形成した。その後、山体を中心に陥没し、約3kmのカルデラを形成した。現在残っているカルデラ壁は、西側の南北方向に伸びる一ノ腰〜前岳の3.5kmと北側の東西方向に伸びる1,055mピーク〜カンバ森の約3キロである。それ以外は、後の侵食作用により、解体したものであろう。
 なお、第一期の火山活動に伴って形成した熔岩の流れた跡は、その後の水の凍結融解によって、ほとんど見られなくなっている。

2.第二期活動

一ノ腰から山頂を望む
 第二期活動は、活動様式が第一期の活動様式と比較して著しく異なっている。また、火山活動によって形成された原地形が極めて良く保存されているのが特徴となっている。
 それは、向岳中央火口丘(熔岩流、熔岩円頂丘)、ヒバクラ岳、小池ガ原の各熔岩円頂丘がそれであり、玄武岩〜石英安山岩までの多様な熔岩類を噴出している。
 二期活動前半の熔岩流は、カルデラ壁を越えて一ノ腰の下部や東ノ又沢付近に分布しているが、地形的には不明瞭となっている。
 その後、カルデラ東縁側に小池ガ原、ヒバクラ岳の熔岩円頂丘がカルデラ縁火山体として形成された。向岳中央火口丘は、熔岩流および熔岩円頂丘から成り、そのほとんどがカルデラ底を埋め尽くしており、火口原は見られない。
 現在、向岳中央火口丘の端を流れ、火口瀬を形成している連瀬沢やその支流の鳥居ノ沢は、向岳中央火口丘形成後の流水の浸食作用により形成されたものであろう。

3.第三期活動

ヒバクラ岳(見晴にて)
 小池カ原、ヒバクラ岳の熔岩円頂丘形成以後、その東側斜面が二度に渡る噴火により山体が崩壊し、馬蹄形の爆裂火口が形成された。
 最初、小池ガ原の北斜面から噴火が始まり、北側斜面が崩壊し馬蹄形の火口が形成された。崩壊物は泥流となって、ノロ川付近の玉川溶結凝灰岩が作った地形を埋めて広い平坦面を形成した。これがノロ川泥流である。
 ノロ川泥流堆積以後、火口内に立ヶ森熔岩円頂丘が形成され、その崩壊物が泥流となって流下した。これが立川泥流である。立川泥流は立ヶ森熔岩円頂丘に規制され、現在の立川と東ノ又沢間を埋めて、広い平坦面を形成した。
 なお、二つの泥流に覆われなかった小又峡は、玉川溶結凝灰岩を侵食して、極めて深い切り立った渓谷を形成した。泥流に覆われたノロ川一帯の沢は、緩やかな流れとなった。
 その後、ノロ川の浸食により、泥流面は段丘化し、低地の一帯は下谷地、上谷地などの湿地帯を形成した。
ノロ川泥流はクマゲラの森として保護林となり、立川泥流派ノロ川牧場として開発されたが平成22年度で廃止した

植 物

山人平のお花畑(チングルマとイワカガミ)
<概 要>森吉山の特徴は、植物の垂直分布の変化を一望に観察できることである。外輪山の一ノ腰や前岳、ヒバクラ岳やカンバ森に立って眺めると、なだらかな山裾から山頂にむかって、ブナ林、ダケカンバ林、オオシラビソ林、山頂部のかん木林へと、森林が移り変わっていく様や、風雪の厳しい尾根筋の植生、林間に点在する雪田の様子などがよく観察できる。
 森吉山には、約300種植物が産し、タカネヒカゲノカズラ、ミヤマシシガシラ、ホソバノキソチドリ、チシマゼキショウ、ミツバノバイカオウレン、イワキンバイ、ネモトシャクナゲ、ヒメウスノキ、オオバツツジ、ヒナザクラ、ハクサンオオバコ、クロミノウグイスカズラ、ウゴアザミ、ミミコウモリ、キャラボク、コメツガなど注目すべき種類も多い。また、ブナ林やオオシラビソ林は自然度が高く、日本の重要な植物群落の一つに選ばれている。
 森吉山も拡大造林計画や開発によって、多くのブナ林が伐採されたが、山体や山麓の奥森吉から奥阿仁にかけては、日本の夏緑落葉紅葉樹林の代表的な植生を観察することができる点で極めて貴重である。
<オオシラビソ林と雪田を飾る> 一ノ腰付近にはコメツガの群生地がある。数本のコメツガが群生した植生が一帯を取り巻いており、特に厳冬期の樹氷群は、オオシラビソの樹氷群とは一味違った造型をみせてくれる。倒れて苔むした古木には、オオシラビソの稚樹が幾本も芽生えているタケシマラン、ツバメオモト、コガネイチゴ、イワナシ、ツルアリドウシ、ゴゼンタチバナ、ツマトリソウなど林床の植物が豊富である。
 代表的なお花畑(雪田)は、前岳〜石森にかけての雪田、山頂部西斜面の稚児平と東斜面の鶴ガ岱、山人平やヒバクラ岳一帯の湿原と雪田帯である。いずれも雪解けと共に、ミズバショウ、ヒナザクラ、ショウジョウバカマ、チングルマ、イワカガミ、ミツバオウレン、バイカオウレン、イワイチョウ、アカモノ、ハクサンチドリ、トンボソウ、ウラジロヨウラクなどが咲き誇る。
 また、初夏〜盛夏に掛けてはニッコウキスゲ、ハクサンシャクナゲ、コバイケイソウ、マルバシモツケなどが、秋に掛けてはキンコウカ、タカネツリガネニンジン、リンドウ、アキノキリンソウ、タチギボウシ、ハクサンボウフウ等などガ雪田を彩る。
山頂部の岩上の割れ目や礫地には、コケモモ、アオノツガザクラ、コメバツガザクラ、ガンコウラン、イワキンバイなどが可憐な花を咲かせている。

動 物

 森吉山には多種多様な動物が生息している。無脊椎動物では、節足動物の昆虫類だけでも蝶類約40種、蛾類約480種、脊椎動物では繁殖の確認されている哺乳類が約20種、鳥類が約80種である。その他の動物を加えるとここでは記載できないほどになるので、ここでは、哺乳類と鳥類の概要をのべ森吉山動物相の紹介としたい。

 1.哺乳類

 森吉山に生息が確認されている哺乳類(種名は頭胴長の大きい順)は、ツキノワグマ、カモシカ、キツネ、タヌキ、アナグマ、ノウサギ、テン、ムササビ、イタチ、リス、オコジョ(ヤマイタチ)、ヒメオコジョ、モモンガ、アカネズミ、ヤマネズミ、ハタネズミ、ヤマコウモリ、ヒメネズミ、ヒミズ、ヤマネ、ユビナガコウモリ、コキクガシラコウモリ。
これら哺乳類の主たる根拠地は、キツネ、タヌキ、ノウサギ、イタチ、リス、ハタネズミは山麓と集落周辺。その他の大部分はブナ林とその林縁。オコジョ、ヒメオコジョはブナ林の上限から山頂部である。ムササビ、モモンガ、ヤマコウモリ、ヤマネなどはブナ林の大径木の樹洞をすみかとしている。
 また、これらのうち日中活動する昼行性のものはツキノワグマ、カモシカ、リス、オコジョ、などで、その他の大部分は夜行性である。
 次に植生からみると、カモシカ、ノウサギ、ムササビ、リス、モモンガ、アカネズミ、ヤチネズミ、ハタネズミ、ヤマネは森吉山に生息している各種の植物の芽、若葉、茎、樹皮、果実、種子等を主食とする植食動物である。そして、キツネ、テン、イタチ、オコジョ、ヒメオコジョは前記の植食動物の中からそれぞれの体力で倒せる相手を選んで捕食するか鳥類、爬虫類、両生類、甲虫類等を捕食する肉食動物である。
 秋、登山道などで石ころの上に未消化の種子の混じっている小さい糞を見かけることが多いが、これはたいていテンの糞である。肉食性の動物でも秋には液果を食べるものが多い。ツキノワグマ、タヌキ、アナグマは雑食である。特に、ツキノワグマは森吉山を代表する大型獣で、ときにはネズミ類やカモシカ類を捕食するが一年を通じて草や木の芽、若葉、果実等を多く食べるので、植食性に偏った雑食性である。
 以上のように森吉山に生息している哺乳類は多種多様な生活様式を持っているが、それらが生活をしていくためには、そのまわりに各種のたくさんの植物と数多くの動物が存在していることが不可欠な条件である。つまり、森吉山の生物全体がつながり(生態系)をつくって生きているのである。森吉山の哺乳類(けもの)は、縄文時代の昔から獲物として狙われてきたが、これまで種族が絶えることなく維持されてきたのは、ブナ林の恵によるものである。

2.鳥 類

繁殖(雛と親鳥) 雛(メス)
ようこそクマゲラの世界へ
本州産クマゲラ研究会
代表:藤井忠志氏のサイトです。
 <集落周辺〜コナラ雑木林〜スギ植林地で繁殖する鳥類>
森吉山で記録された鳥類は約80種で、その中で繁殖が確認されているものは約80種である。
 トビ、キジバト、カッコウ、アオバズク、フクロウ、ヤマセミ、カワセミ、アオゲラ、ツバメ、イワツバメ、キセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、クロツグミ、アカハラ、ウグイス、オオヨシキリ、
センダイムシクイ、オオルリ、コサメビタキ、ヤマガラ、シジュウカラ、メジロ、ホオジロ、ノジコ、
カワラヒワ、スズメ、コムクドリ、ムクドリ、ハシボソガラス、ハシブトガラスなど。
 5月から7月の繁殖期に、登山道から歩いていくと、コナラの雑木林からは、チョチョジーというセンダイムシクイの鳴き声やちー中るチーチュルチーチュルチルルチルルチュルチーと細い鳴き声のメジロの囀りが聞こえてくる。植林間もない背丈の低いスギとヤマツツジの生えている明るい山地の低木の梢でよく囀っているのはホオジロである。一筆啓上・・・と聞こえる。
 時折、ギチギチギチと鳴き、尾をゆっくり振り回すモズも見かける。谷筋の高いスギの梢で、ピーリーリー・ポイヒーヒピ・ピールリピールリ・ジェッとゆっくり明るい声で鳴く上面青色の鳥はオオルリである。
<ブナ林で繁殖する鳥>
 オオタカ、ノスリ、クマタカ、イヌワシ、ヤマドリ、アオバト、ジュウイチ、カッコウ、ツツドリ、ホトトギス、オオコノハズク、コノハズク、フクロウ、ヨタカ、ハリアオツバメ、アカショウビン、ブッポウソウ、クマゲラ、アカゲラ、オオアカゲラ、コゲラ、キセキレイ、カワガラス、ミソサザイ、コルリ、マミジロ、トラツグミ、ヤブサメ、ウグイス、エゾムシクイ、センダイムシクイ、キビタキ、エナガ、コガラ、ヒガラ、シジュカラ、ゴジュウカラ、アオジ、クロジ、イカル、カケス。
 夏の森吉山のブナ林を登っていく時、プイピ・ピッピピョー・ピッピピョーと陽気な鳴き声で、一番囀りを多く聞かせるのがキビタキである。
 ツペツペツペツペ・チピイチピイチピイなどとハーモニカの弦をはじいたような金属製の音を出して囀り、せわしく動き回るのがヒガラである。
 ツーピージャラララと鳴き、ほっぺに大きい白斑があって、のどから下腹にかけ黒い長いネクタイを下げているようなスズメくらいの鳥はシジュウカラである。
 チッチッチッチッチーカラカラカラと登山者をせきたてるように鳴くのがコルリである。ブナの幹に縦に止まり、時には逆さに歩きフィフィフィフィと鳴くのがゴジュウカラである。黒い地に白い斑模様がありキョッキョッと鳴くキツツキはアカゲラである。
 クマゲラはたくさんの鳴き声をみせるてくれる。木に止まって雛に呼びかけるときなどはクイッコ・クイッコまたはクイー・クイー・クイーと鳴く。ギャーッ・ギャーッ・ギャーッは警戒音に聞こえる。営巣木から飛び立つ時にはコロコロコロコロコロと鳴きながら飛んでいく。クマゲラはなかなか姿を見せないが、つがいで木に止まっている時は、会話のようにコロロ・コロロ・コロロと鳴いているので存在を確認できる。森にこだまするドラミングの音は、特に繁殖期に自分のテリトリを示す行動であって鳴き声ではない。ブナなどの枯れ木に深くて大きい食痕をのこしている。クマゲラはブナ林の象徴である。また、ブナ林の上限近くでフィーチュイチュイと声量の大きい声で鳴くクロジも、秋田県北部ブナ林の標徴的存在である。
<オオシラビソ林〜山頂部低木帯で繁殖する鳥類>
カッコウ、ハリオアマツバメ、キセキレイ、ビンズイ、ミソサザイ、カヤクグリ、コマドリ、ルリビタキ、ウグイス、メボソムシクイ、キクイタダキ、ヒガラ、キバシリ、ホオジロ、ウソ、ホシガラスなど。
 ブナ林を上りつめて稜線にでると、亜高山帯特有のオオシラビソ(アオモリトドマツ:地元ではモロビ)原生林を展望できる。オオシラビソの梢からひょいと舞い上がり、ピイピイピイスカースカースカスカスカと早口に囀りまた梢にもどる小鳥に何回か出会うがセキレイ科のビンズイである。
 オオシラビソ林の松かさをくちぱしで盛んにたたいて、ガーガーガーと鳴き交わすのがホシガラスで、こげ茶の地に白い斑のある小型のカラスである。
 ヒッ・フッ・ヒョ・ヒョと口笛のように鳴くほっぺの赤い鳥はウソである。冬季には山麓に下り広葉樹の芽をついばむ。
山頂の最後ののぼりにたどりつく辺りにくると、オオシラビソ林からゼニトリゼニトリ・ゼニトリとかチリチブチリチブ・チリチブとしきりに鳴くのがウグイスのなかまのメボソムシクイである。
山頂間近のハイマツ群落からチリリリリと細い鈴のような鳴き声が聞こえてくるのがカヤクグリの囀りである。

NPO森吉山ネイチャー協会
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