【病気になる家
             渡辺 雄二  KAWADE夢新書 p207 1998,12

    著者紹介:科学評論家として、食品、環境、医療、バイオテクノロジーの問題点を提起し、執筆中。

 

◎ まえがき

その頭痛、吐き気、目の痛み・・「シックハウス症候群」かもしれない!

家が原因で病気になるとは不可解な話である。住宅建材から多量の有害な化学物質が揮発し、めまいや頭痛、目や鼻の痛み、食欲不振、下痢、動悸、疲労感、不眠やうつ状態などの原因になる。シックハウス症候群は住宅から出る有害化学物質による化学物質過敏症である。自然界の物質が体内に入ってもその多くには対処できるが、人工化学物質では処理が困難なことが多い。化学物質で体の細胞がダメージを受けたり、拒否反応を示し、さまざまな症状となる。

シツクハウス症候群は、有害化学物質が体の免疫に直接作用し、頭痛、不眠やゼンソク、アレルギー性鼻炎などのアレルギー病も引き起こす。さらに、有害化学物質がダニアレルギーやカビアレルギーの引き金になる。ダニやカビに有害化学物質がくわわると免疫が異常に活性化されて、アレルギー反応を起こす。

シックハウス症候群を防ぐには原因を取り除くことが第一で、原因の化学物質を明らかにし、さらに、ダニ、カビなどのアレルゲン(アレルギーの原因物質)との関係を解明することが必要である。住宅内の有害化学物質とその発生源、どのように化学物質過敏症やアレルギーがおこるのかを明らかにし、さらに、症状に襲われずにすむ方法を示した。

シックハウス症候群は人間がつくり出した文明病で、便利さ、快適さ、経済性を追求した住宅が人間を苦しめている。シックハウス症候群にかかっていることに気づかずに苦しみ、また不適切な治療で症状を悪化させているケースも少なくない。頭痛やめまい、下痢、不眠などに苦しんでいたら、シツクハウス症候群を疑ってみるべきだ。

 

◎ プロローグ 頭痛、吐き気、目の痛み・・マイホームが牙をむく

住宅建材に合成樹脂や接着剤が多量に使われ、壁、床、天井、畳からは有害化学物質が揮発し、またシロアリ駆除剤などの殺虫剤も使われている。症状が風邪や疲労と似ているので本人も勘違いし、医師も誤って診断し、いっそう悪化させるケースが多い。どんな人でも多かれ少なかれシツクハウス症候群の症状に襲われる可能性が強い。

○新築した家でゼンソクが発症    

世田谷区に住む鈴木さん(56歳)が新築(6月)し、12月に異変が生じた。風邪のような症状で、のどが激しく痛み、咳がでたが熱はなかったが、2〜3週間後ゼンソク状態になった。風邪と診断され、奥さんも「目が疲れる」と眼科医院に通院するようになった。鈴木さんの姪が「この部屋にいると苦しい」といいだし、「家がいけないのでは」と直感した。

鈴木さんは寝るときだけ自宅にもどったが症状は改善されず、医師からステロイドホルモンを含む薬をもらい、ゼンソクは一時的に治まった。

ホルムアルデヒドが、最低で0.07ppm、最高で0.215 ppm、TCEP(プラスチックの加工を容易にする薬剤)も通常の値0.02 ppmの10倍近くと、築後1年3か月でも高濃度の化学物質があった。建設した会社に家の改修工事をしてもらった。壁紙をはがし、下地材の石膏ボードに付着した接着剤をきれいにはがし、ホルムアルデヒドが石膏ボードを通過するのを防ぐためのペンキを塗った。ゼンソクの症状はなくなった。

○つらい症状で目殺まで考えた

広田さんの娘さんは小学校のころアレルギー性鼻炎と診断され、体質改善の注射で改善されたと思っていた。就職した会社のビルに印刷工場もあり、有機溶剤を2年間吸いつづけた。その後フィルム会社に出向したが、仕事場の向かいに実験室があり薬品の臭いが漂っていた。まもなく彼女が異常を訴え、頑固な肩こりになり、「のどがおかしい」とのどアメを持ち歩くようになった。倦怠感、不眠、不安、うつ状態になり、動作は緩慢になり、考えもまとめられなくなった。ベツドから起き上がれなくなり、完全なうつ状態に陥った。心療クリニツクでは睡眠薬をわたされただけで、副作用で体もふらつくようになった。

まぶしそうに目を開けられない状態を見て、親は化学物質過敏症ではないかと気づいた。北里大学の宮田幹夫医師が診察に当たり、薬の服用を一切中止し、ビタミン剤を飲み、運動することになった。「もう大丈夫」と明るい顔になったのは、治療から1か月後で、自殺寸前までいったと聞かされ、親は背筋が凍りつく思いだった。

○シックハウス症候群で苦しむ人々

広田さんはこの病気を多くの人に理解してもらおうと、「化学物質過敏症ネットワーク」をつくった。シックハウス症候群の例を紹介しよう。

* 発作で身動きができない(37歳女性岡山県在住) 結婚して大阪の新築マンションに移り、すぐに不整脈となり、食欲がない、眠れない、背中が痛いなどの症状に襲われ、暑いときに鳥肌が立ったり、寒いのに汗をかいたりと、体のリズムが狂ってしまった。

その後、岡山の新築アパートに転居したが、シツクハウス症候群の症状はつづき、耳鼻咽喉科で「異常なし」と診断された。衣服に触れる部分の皮膚がかぶれ、腰が痛み、窓を閉めていると不安でいたたまれなくなった。1年後、新築マンションヘ転居。症状はいっそうひどくなった。心療内科、内科で診察を受けたが、「病気といえるほどではない」といわれたが、土など自然の臭いでも発作を起こすようになった。重症の化学物質過敏症と診断され、その後も発作を起こし、改善されない。

*視力低下、呼吸困難で診断は心身症!(S15歳男性神奈川県在住) 1990年に、新築戸建てに入居した。(小学4年生) 小学1年に1.0あった視力が、0.1に低下した。S君の部屋のクローゼットに母親が防虫剤を大量に入れたのち、S君の体調が悪くなり、ゼンソクに似た症状や不眠、吐き気に襲われ、入梅から真夏にかけて症状がひどく、秋から冬にかけて空気が乾燥してくると軽くなった。心療内科では心身症と診断され、無気力になり家ではゴロゴロし、さらに視力が低下した。防虫剤の化学物質が原因とわかり、母親は申し訳なさでいっぱいだという。

     誰もがシックハウス症候群になりうる

 きわめて深刻な状態だが特別なケースではない。この病気を理解してもらえず、苦しんだり、悩んだりしている人が多い。同じような環境にあれば、どんな人でもこうした症状に襲われる可能性が十分ある。そうならないためには、あるいはそれを治すためには、その原因やそのメカニズムを知ることが必要だ。

 

◎第1章 「シツクハウス症候群」のこれが恐るべき正体だ

めまい、立ちくらみ、疲れ目、動悸、頭痛、下痢、食欲不振、倦怠感など、体の不調を感じたら、シツクハウス症候群を疑ってみたほうがいい。有害化学物質を私たちは毎日吸いこんでいる。さらに家具や暖房器具などからも、有害化学物質が出ている。

人間の体は有害なものを取りこまない仕組みをもち、舌が味を認識し吐き出し、胃袋に到達したら胃が激しく収縮し嘔吐して毒物を排出する。しかし、ごく微量では味や臭いを感じることがむずかしく、消化管にまで達する。身体には迷惑な物質なので、下痢して排泄されるが、吸収され血流で全身に回る場合もあり、頭痛や動悸、倦怠感などとなる。鼻の粘膜に微量の有害化学物質が付着すると、鼻水、鼻づまり、クシャミなどを起こす。この症状は警告で、有害化学物質によって細胞がダメージを受け、肝臓や腎臓などの内臓が機能不全になることもある。また遺伝子が突然変異を起し、ガン化することも考えられる。原因を突きとめ、取り除いていく努力が必要である。

○化学物質過敏症とはどんな病気なのか

化学物質過敏症がわかったのは最近で、雑誌(1988年)に、女性医師の有機リン系の殺虫剤による奇妙な症状が掲載された。初夏、突然腹痛、下痢、動悸、筋力低下などに悩まされ、診察を受けたが原因はわからなかった。アリ退治のために有機リン系の殺虫剤を、いつもより多く散布したことを思い出し、有機リン剤による中毒症状と同じであることがわかった。話題となり、殺虫剤の危険性が再認識され、有機リン剤の散布が規制された。日本でも、シロアリ駆除剤が原因のシックハウス症候群に陥っている人は多いだろう。

日本人の1000万人以上が化学物質過敏症に悩まされ、症状はさまざまだが、敏感な部分、つまり目、鼻、のどなどにあらわれる。このほか、皮膚や内臓、神経器官、内分泌器官にも障害が、また、全身倦怠感に襲われることもある。化学物質過敏症の症状を次のように整理できる。

     眼科的障害…結膜の刺激症状、調節障害、視力障害

     気道障害…咽頭痛、口渇

     内耳障害…めまい、ふらつき、耳鳴り

     消化器障害…下痢、便秘、悪心(気分が悪くなること)

     循環障害…動悸、不整脈、循環障害

     免疫障害…皮膚炎、ゼンソク、自已免疫異常

     自律神経障害:発汗異常、手足の冷え、頭痛、疲労感

     運動器障害…筋力低下、筋肉痛、関節痛、ふるえ

     精神障害…不眠、不安、うつ状態

体のあらゆるところ、さらに精神にも症状があらわれる。

原因はさまざまな有害化学物質で、自動車の排気ガス(とくにディーゼル車から排出される炭素微粒子)、工場排煙、除草剤、殺虫剤、シロアリ駆除剤、食品添加物、残留農薬、合成洗剤、抗菌剤、防ダニ剤、壁紙、接着剤、塗料、断熱材、洗浄剤、漂白剤、芳香剤などである

70年代に指摘されたシックビル症候群

シックビル症候群が知られたのは1970年代末で、完全空調ビルで働く人たちの頭痛、無気力、鼻づまりやのどの乾燥感、鼻炎が、自然換気の場合に比べて約2倍から6倍も多い。完全空調のビルは空気が循環して、外から空気が入ってくることが少なく、一度化学物質に汚染されるとそれを吸いつづけ症状があらわれる。

WH0(世界保健機関)では、シックビル症候群を次のように定義している。

@     目、とくに眼球結膜、鼻粘膜およびのどの粘膜に刺激症状があらわれる。

A     唇などの粘膜が乾燥する。 B皮膚に紅斑、ジンマ疹、湿疹などができる。

C     疲れやすい。 D頭痛や気道の感染症を起こしやすい。 E 息が詰まるような感じがし、喘鳴がする。 F 原因がはっきりしない過敏症。 G めまい、吐き気、嘔吐などを起こす。

シックビル症候群の原因物質は、建材、接着剤などからの化学物質で、ホルムアルデヒドの影響が大きい。オフィスビルには、ホルムアルデヒドのほかに、トルエンやアルコール類、さらに殺虫剤や防カビ剤、白アリ駆除剤などのさまざまな化学物質、タバコの煙、ダニやカビ、光化学スモツグ、ラドン、アスベスト、さらに集団生活でのストレスも、シックビル症候群の原因となる。石油ストーブ、ガスストーブなどから窒素酸化物などの有害化学物質もめまいや頭痛などの原因となる。ダニやカビ、ストレスなどが原因で起こる症状も、シックビル症候群にふくまれる。

〇化学物質過敏症のメカニズムとは

化学物質過敏症は、化学物質にたいして体が防衛、適応しようとしてあらわれる。人間の体は環境に適応する力をもち、有害化学物質にたいしても適応が起こり、微量では体がそれに適応し通常の生活を送ることができる。ところが、その有害化学物質にしばらく接触しないで、ふたたび接触すると、激しく反応しさまざまな症状があらわれる。有害化学物質が侵入したことを知らせる、あるいは体の外に排除する反応が、激しくあらわれる。目や鼻、のどや口などは、体の内側と外界との接点なので、有害化学物質を体外に排出する反応があらわれる。

同じ環境にいても、症状があらわれる人とあらわれない人がいるのはなぜだろう。化学物質にたいする抵抗力、許容力に個人差があり、Aさんは10の許容力があり、いっぼう、Bさんは許容力が5で、5を超えると症状が出るが、Aさんは10を超えるまでは症状が出ない。逆の見方もできる。Bさんのほうが有害物質への感度が高いため、Aさんよりも少ない化学物質の量で症状が出て、Bさんの防衛システムが敏感に働いていることになる。

〇アレルギーと化学物質過敏症はどう違うのか

アレルギーは免疫反応の一種である。花粉やダニなどのアレルゲンが体内に侵入してくると、それにリンパ球が反応し抗体をつくる。抗体とは、細菌やウイルスなどが体内に侵入したときにそれを撃退するためのもので、アレルゲンにたいする抗体は免疫グロブリンE抗体(IgE抗体)という。ふたたびアレルゲンが侵入すると、IgE抗体と反応しヒスタミンなどの活性物質が放出され、筋肉を収縮させたり、血管を広げたり、血管の浸透性を増すので、アレルギー症状があらわれる。放出が気管支で起こればゼンソク、鼻で起こればクシャミや鼻水が出てアレルギー性鼻炎、皮膚で起こればジンマ疹となる。化学物質過敏症は免疫よりも体細胞の直接的な反応なので、アレルギーほど症状がはっきりしない。

化学物質過敏症は、アレルギーよりも微量の化学物質で起こる。猛毒の青酸カリを150mg以上摂取すると死亡するのにたいし、ppmレベル(1 ppm は0.0001%)の化学物質に免疫が反応してアレルギーが起り、化学物質過敏症はさらにその1000分の1のppbレベル、さらにその1000分の1のpptレベルで起こる。

〇アレルギーは化学物質が起こす

ダニ、カビ、花粉、牛乳、卵など、タンパク成分がアレルゲンになる。体の中に入ってくると、リンパ球がそれを認識しIgE抗体をつくり、アレルギー反応が起こる。リンパ球が認識するには、一定の大きさが必要で、タンパク質はその条件を満たしている。化学物質もアレルゲンとなり、ゼンソクは排気ガスや工場の排煙にふくまれる窒素酸化物や硫黄酸化物、炭素微粒子などの有害化学物質が主な原因である。

ディーゼル排ガスには、窒素酸化物、硫黄酸化物、ニトロピレンやベンツピレン、さらに大型トラックの排気ガス中には超毒物のダイオキシンがふくまれる。ディーゼルエンジンの排気ガスを10倍に薄めてネズミに吸わせると、ディーゼル微粒子が肺に多量にたまり、2年間吸わせつづけたネズミの42%に肺腫瘍が発生し、26%は肺ガンになった。ディーゼル車の排気ガスを毎日吸いこむと、ガンが発生する恐れもある。発ガン物質を咳で吐き出そうとし、また体が異常なのを知らせようとするのがゼンソクである。大気汚染地域で、鼻アレルギーになる人が多くなっている。

〇花粉症も化学物質が引き金に

スギは山村に多いのに都市に住んでいる人に花粉症患者が多く、スギは昔から生えているのに花粉症が発見されたのは1964年。この謎を解く鍵が自動車の排気ガスである。

マウスにスギ花粉だけを注射しても花粉症が発症しないが、ディーゼル排ガスがくわわると、花粉症が発生するとことがわかった。これを裏付ける疫学調査がある。日光街道沿いに江戸時代のスギ並木がある。@自動車の多い「スギ並木地区」、Aスギは多いが車は少ない「スギ森地区」、Bその他の「一般地区」に分類し、住民3133人に花粉症の症状の調査を行なった。「スギ森地区」では7〜10%と低く、スギがきわめて多く車がほとんど通らない小来川地区では5.1%と少なかった。ところが、「スギ並木地区」では14%で、小来川の3倍近かった。ディーゼル車排気ガスは、卵アレルギーを悪化させ、さまざまなアレルゲンにたいするIgE抗体の発生量を高める。

農薬もアレルギーを悪化させる。モルモットに体重1kg当たり1000万分の1gのごく微量スミチオンを注射しただけで、アレルギー性結膜炎の症状が悪化した。アレルギー性結膜炎の悪化は、除草剤のパラコートでも確認された。ホルムアルデヒドもアレルギーを悪化し、ホルムアルデヒドを吸入させたモルモットがアレルギーを起こしやすくなることが確認された。

花粉やダニ、食べ物が原因のアレルギーはどう考えたらいいのだろう。スギ花粉だけを作用させてもアレルギーは起こらず(卵アレルギーやダニアレルギーにも当てはまる)、花粉、ダニ、カビが作用する前あるいは同時に化学物質が作用することで、免疫が異常に活性化されて、IgE抗体がつくられやすくなり、アレルギーがでるのだろう。

アレルギーは基本的には体を守る反応である。花粉やダニ、カビは有害ではないし、牛乳、卵、大豆は体を養う大切な栄養源である。これにアレルギーを起こす人が少ないのならわかるが、アレルギーを起こす人が3人に1人では異常である。ダニも花粉もカビも大豆や米も大昔から存在し、アレルギーを起こす人などいなかった。

花粉症の最大の要因が有害化学物質で、アレルギーを起こすIgE抗体の量をふやすし、体のバランスが崩れて起こる。殺虫剤やホルムアルデヒドでも同じで、通常なら反応しない花粉、ダニ、カビ、さらに卵、牛乳にまで反応、アレルギー症状となる。有害化学物質が、化学物質過敏症を引き起こし、さらに直接アレルギーを引き起こし、促進役として作用するのがシックハウス症候群である。

 

◎第2章  “毒”は壁や床、そして畳からも発生している

壁や天井、床、畳などから出る化学物質の影響が大きいのは、表面積が大きいぶん放出される化学物質量が多く、有害なものも多いからだ。

ホルムアルデヒドは刺激臭のある無色の気体で毒性が強い。水によく溶け水溶液をホルマリンといい、殺菌作用があり温室や土壌のくん蒸剤として利用された。目、鼻、のどに刺激作用があり、不快感、流涙、クシャミ、咳、吐き気、呼吸困難などで、アレルギー性鼻炎やゼンソクの症状に近い。ホルムアルデヒドの臭気閾値(50%の人が臭気を感じる濃度)はO.05〜0.06ppmで、0.13ppmを超えると粘膜などに刺激症状があらわれ、4ppmで不快感や目、鼻、のどの刺激、50ppmでは皮膚や肺に炎症が起こり、100ppm以上で死亡する。ホルマリンを扱う労働者に肝臓ガン、前立腺ガン、膀胱ガン、脳腫瘍などが多発する。

住宅内でのホルムアルデヒドの発生源は、喫煙、暖房器具、家庭用品、合板や化粧板、パーティクルボード、壁紙の接着剤である。発生速度は単位面積、単位時間当たりの発生量で比較でき、ベニヤ合板で43mg、普通合板で1.9mg、特殊加工化粧合板で7.7mg/m/日となっている。また、暖房器具からもホルムアルデヒドは発生し、石油系暖房器具からは8.3〜37.2ml/時間、ガス暖房器具からは6.8〜119ml/時間となっている。0.1mg/m(0.08ppm)という室内の基準値がある。

ホルムアルデヒドは自動車や工場の排出ガスにもかなりふくまれ、大気もホルムアルデヒドに汚染されている。

〇どの建材からどんな物質が出ているのか

さまざまな化学物質をまとめて揮発性有機化合物(VOC)といい、ホルムアルデヒドもVOCの一つである。個々の揮発性有機化合物濃度の総和を、全揮発性有機化合物(TVOC)といい、汚染濃度の水準を示す。

VOCが人体におよぼす影響には急性と慢性とがある。急性症状として、疲労感、頭痛、眠気、めまい、視界のぼやけ、弱視化、皮膚刺激、眼・気道刺激、動悸など、慢性症状としては中枢神経の刺激と抑制、麻酔性、発ガン性がある。

〇有毒な接着剤が使われている合板とは

合板には大量の接着剤が必要となる。メラミン樹脂系、ユリア樹脂系、フェノール樹脂系の接着剤からホルムアルデヒドが揮発する。

[普通合板] 

JAS1類…フェノール系とメラミン系の接着剤使用。

JAS2類…ユリア系接着剤使用。

JAS3類…ユリア系接着剤、カゼイン使用。

[プリント合板] 酢酸ビニル系か、それにユリア系を混合したもの使用。

[PVC合板] 接着剤はEVAエマルジョン使用。

[塗装合板] ポリウレタンやポリェステル塗料をかける。

集成材に多量の接着剤が使われている。

[パーティクルボード] ユリア系接着剤使用。ユリア系接着剤は、パーティクルボードの7〜10%。耐水性や変形しにくさを要求される場合は、水溶性フェノール系接着剤使用。

[ハードボード] 水溶性フェノール系接着剤使用。ハードボードの2〜4%が接着剤。

[集成材] 構造用集成材……レゾルシノール系接着剤使用。

化粧用集成材……ユリア系か水性ビニルウレタン使用。

合板の接着剤には殺虫剤が混ぜられることがあり、スミチオン、ホキシムなどホルムアルデヒドとともに揮発していると考えられる。

〇安全な接着剤、危険な接着剤

木材用の接着剤は、ホルムアルデヒドのある、なしで分類できる。

[ホルムアルデヒドをふくむ] ユリア系接着剤……ホルムアルデヒドが揮発する。安価で無色なので木材を汚さない。合板接着に利用され、合成系接着剤の約40%を占める。

メラミン系接着剤……ホルムアルデヒドが揮発する。無色で木材を汚さないので、ユリア樹脂と混ぜて使われる。年間生産量は7万トン。

フェノール系接着剤……ホルムアルデヒドが揮発する。屋外耐久性に優れ、年間生産量は約4万トン。

レゾルシノール系接着剤……ホルムアルデヒドが揮発する。集成材やプレハブパネルに使用できる。

[ホルムアルデヒドをふくまない]

アルファーオレフィン系接着剤……ホルムアルデヒドもない木材用接着剤として開発され、接着速度が多少遅い。合板、集成材、無機質板、天然木化粧板に使われる。

酢酸ビニ一ルエマルジヨン接着剤・…木工用ボンド。無色透明に乾く。硬化時間が比較的短く、子供の工作から、寝具、建具、楽器、建築に幅広く使われている。酢酸ビニルには発ガン性がある。

水性高分子イソシアネート系接着剤(水性ビニ一ルウレタン) ……木材を汚さず、熱にも強い。集成材やプレハブパネルなどに使われる。

水性ハネムーン接着剤……プライマーは、グリオキザール水溶液。木材の片面にプライマーを薄く塗り、他面に主剤を塗って貼り合わせ、40〜60秒間プレスすると接着する。

このほかデンプンのり、ニカワ、カゼインなど天然系の接着剤があり、安心して使える。

〇知られざる壁紙の可塑剤の毒性

壁紙のほとんどはビニール製壁紙で、加工性をよくし、柔軟性をもたせるために可塑剤が添加されることが問題で、軟質ポリ塩化ビニルには可塑剤が25〜50%もふくまれ、主なものは、DOP、TCP、TCEPである。

[DOP]:オスのラツトで睾丸萎縮、メスでは胎児死亡や胎児障害の毒性がみられた。

 [TCP]:有機リン系物質で、中毒で嘔吐、下痢、腹痛などを起こし、倦怠感や感覚異常などの神経症状、さらに重症になると、手指の麻痒や運動障害を起こす。

[TCEP]:難燃剤。室内空気に最高で2054ナノグラム/m3(ナノは10億分の1)が検出された。この濃度のTCEPを吸いつづけると、少なくとも10万人に数人がガンになる。

ビニール製壁紙は、通気性が悪くカビが繁殖しやすいので、強い毒性をもつ有機鉛系の殺菌剤が使われていることが多い。

〇床材から揮発した有害物質が室内に

合板が多く、ムクの板でも塗料が塗られている。マンションなどでは吸音材としての合成樹脂から化学物質が揮発し、床仕上げ材に塩化ビニールシートや塩化ビニールタイルが使われる。塩化ビニルタイルでは、ポリ塩化ビニル樹脂に可塑剤としてフタル酸ブチルベンジルやフタル酸ジラウリルが使われ揮発する。

床材に衝撃や音を吸収しやすい合成ゴムを使うと、弾力性を増すために加硫促進剤(農薬の成分に似て毒性が強いものが多い)が添加されている。

〇頭痛を起こす塗料の成分

内装材に塗料やニスが塗られ、湿気の多いところには腐朽防止やカビ防止用の塗料が塗られる。塗料の臭いは強烈で、気分が悪くなったり頭が痛くなったりするが、これもシックハウス症候群だろう。塗料の主流は合成樹脂塗料で、それを薄める溶剤には多くの化学物質がふくまれる。

〇壁材にはどんな物質が使われているか

プラスターボードは問題が少ない。断熱材のプラスチツク発泡体は、発泡ポリスチレンと発泡ポリウレタンが代表的。ポリスチレンの原料のスチレンは国際がん研究機関が発ガン物質に指定し、ポリスチレンには100〜3000ppmのスチレンモノマーが残留している。

〇畳に使われる防虫シートの危険性

日本工業規格は、稲わらを使った畳は防虫処理することを義務づけている。高周波で加熱する方法と、殺虫剤を染みこませた防虫加工紙(防虫シート)で畳をくるむ方法とがあるが、安価な防虫加工紙利用がほとんどだ。

防虫加工紙に使われている殺虫剤は、有機リン系のスミチオン、フェンチオン、ダイアジノンなどで、加工紙から染み出しダニなどを殺し、住みつくのを防いでいる。殺虫剤が畳表面に微量ながら染み出し、乳幼児などが吸いこんだり、なめると危険である。

防虫加工紙に使われている殺虫剤の毒性をみよう。

[スミチオン] 急性毒性は弱いが、動物実験で精子、免疫、副腎に障害をもたらす。茨城県で、ダニ退治にスミチオンを散布し急性中毒によって5歳の女の子が死亡し、10歳と8歳の男の子が意識障害を起こした事件があった。

[フェンチオン] 劇物で発ガン性がある。ラットの胎児に毒性がある。

[ダイアジノン] 劇物に指定され、犬や豚などでも死産や奇形の発生がある。

水田でスミチオンを使う場合と、防虫加工紙に使われている量とを比較する。水田用のスミチオン乳剤にはスミチオンが50〜80%ふくまれ、1000倍から2000倍に薄めて使用するので、0.05g/m使われる。防虫加工紙では1〜1.5g/mだから、20倍以上も多い。防虫処理をした畳を入れた部屋の空気(室温30℃、畳の上10cmで採取)には最高で7マイクログラム/m(マイクロは100万分の1)の殺虫成分が漂っていた。新築の和室で療養したら、1日に吸い込む量は100マイクログラムになり、フェンチオンの1日摂取許容量の1マイクログラム/kg/日の約2倍になる。畳をはい回る乳幼児は大人よりもエネルギー代謝が盛んで、体重当たりの呼吸量が多いため、より大きな影響を受ける。

〇シロアリ駆除剤はこんなに恐ろしい

新築時はもちろん、その後も定期的に散布され被害を受けている人は多い。

木材はイエシロアリやヤマトシロアリなどによる食害と、菌類による腐朽などの被害を受ける。最近ではアメリカカンザイシロアリ、ダイコクシロアリが日本各地に広がり、南ほど被害が多い。

シロアリの建築物への侵入は、巣から土を伝ってくるから、防除の基本は、@木部への到達阻止 A到達後の木材の食害阻止 となる。木材の処理には、防腐剤とシロアリ駆除剤の混合剤、あるいは防腐とシロアリ駆除を兼ね備えた化学物質が使われ、クロルデンは使用禁止になり、有機リン系のクロルピリホスとホキシムが使われる。

[クロルビリホス] 劇物に指定され、養殖池周辺では使用してはならない。

[ホキシム] クロルピリホスに比べて急性毒性は弱く、シロアリ駆除だけに使われている。皮膚から吸収されて、中枢神経や目にある酵素の働きが妨害され、目の痛み、瞳孔縮小、流涙、食欲不振、下痢、頭痛、けいれん、ノイローゼ、不眠など。さらに重症の場合死に至ることもある。

シロアリ駆除の土壌処理には、床下の土壌にシロアリ駆除ひふく剤を散布するほかに、駆除剤をふくんだ材料で覆う方法もあるが、シックハウス症候群の原因となる。関西はイエシロアリが多くクロルピリホスが使われ、関東はヤマトシロアリが多くホキシムが使われている。シロアリ駆除には有機溶剤が使われ、有機溶剤は揮発しやすく長時間吸いこむと内臓疾患を招くことがある。

入居までの時間を置くこと、十分に換気することが汚染軽減に効果がある。

 

◎第3章 室内の空気を汚染する家具、日用品の実態とは

化学物質は家具、本箱、食器棚などからも出る。接着剤が使われ、防虫家具は有効期間中防虫剤が浸み出す。石油ストーブやガスストーブなどからは、窒素酸化物や硫黄酸化物、炭化水素、一酸化炭素などの有害化学物質がで、クーラーやエアコンからは、フィルターに増殖したカビや抗菌剤も部屋中にばらまかれる。掃除機の紙袋は抗菌剤や防ダニ剤で処理されている。布団は防ダニ加工され、カーペツトやカーテンも、抗菌・防ダニ加工された製品が多い。ハエ、蚊用殺虫剤、ゴキブリくん煙剤、蚊取り線香、衣類防虫剤、ダニ用殺虫剤、ペツト用ノミ取り首輸、芳香・消臭剤などにも、有害化学物質が使われている。

〇石油ストーブでゼンソクになる!

灯油やガスが燃えると窒素酸化物や一酸化炭素などが部屋に排出される。石油ストーブは、定期的に部屋の換気を行なうよう注意書きにかならず書かれているほどの機器である。二酸化窒素の発生量が多いため、のどや気管支が敏感な人はゼンソクを起こすことがある。33mの部屋で家庭用放射型石油ストーブ(1760〜52200kcal/時間)を1時間たくと、二酸化窒素濃度は0.37ppmになり、二酸化窒素の環境基準:0.04〜0.06ppmの10倍弱になる。

小学4年生を対象にゼンソク症状と室内の二酸化窒素濃度を調査した。二酸化窒素の1日の平均濃度が0.06ppm以下の部屋で過ごしている子供では、ゼンソク症状発生率が3.15%にたいし、0.06ppm以上では5.37%と高かった。二酸化窒素が気道や気管支に障害をもたらし、ディーゼル排出粒子と同様にIgE抗体の量をふやし、アレルギーを引き起こしやすくする。ファンヒーターは有害化学物質をまき散らすだけでなく、カビやダニの死骸もまきあげ、二酸化窒素とカビやダニの相乗作用で、アレルギーがいっそう起こりやすくなる。

〇掃除機が化学物質をばらまく!

掃除機からいやな臭いがでるのは、ゴミパツクにたまったハウスダストが微生物によって分解され、その臭いが吐き出されるからだ。抗菌剤が使われ、カビが発生していればそれもばらまかれる。紙パックの抗菌剤はクロルヘキシジン(病院での消毒剤)、第4級アンモニウム化合物(抗菌グッズ)、ジンクピリチオン(細菌の増殖抑止)、TBZ(農薬)である。掃除機で化学物質過敏症やアレルギー症状を起こす可能性があるので、セントラルクリーナーを使いたい。

〇エアコンから放出されるカビと抗菌剤

クーラーやエアコンはフィルターにカビが繁殖しやすく、カビが部屋中にばらまかれ、アレルギーの原因となる。クーラー吹き出し口のカビ(真菌)の数は、クーラーを10日間使わずに吹き出すと約140個あり、翌、翌々日とも、いずれも40〜50個の真菌が出ている。フィルターを掃除しても40個くらいの真菌が出るが、3時間くらいでなくなる。クーラーやエアコンはクリーンな器具ではない。フィルターが抗菌加工されているものもある。

〇防ダニ布団、カーペットがアレルギーの原因に…

中綿に化学物質を染みこませて、防ダニ布団としているが、防ダニ剤は表示されていない。使用化学物質は、ダニなどが避ける薬剤で、殺すほどの力はない。国民生活センターに防ダニ加工製品の相談が寄せられ、『防虫、抗菌、防臭、ダニ予防』表示の布団を買ったが臭いがひどく、頭痛がして気分が悪いという。

防ダニ布団はアレルギーを引き起こすこともあると島津医院(京都市)の幸寺院長は指摘している。「防ダニ加工の布団に使っている安息香酸系のベンジルアルコールは、治療経験からアレルギーを起こしうるものです。肌につけば人によってはかぶれ、アレルゲンになる可能性があり、鼻や口から吸収してゼンソクを起こした報告があります。フタルイミド系は毒性はさらに強く、人体への影響も大きいでしょう。ヒノキ天然精油のヒノキチオールはフェノールの一種で、接触アレルゲンになります」

カーペツトやカーテンも、同じだろう。

〇家屋用殺虫剤の危険性

ハエ・蚊用の家庭用殺虫剤の主成分のピレスロイドは除虫菊殺虫成分のピレトリンに似せた物質で化学合成される。「キンチョール」や「コックローチ」などの成分はピレスロイドで、スプレー式の殺虫剤では細かい霧となり部屋中に広がるので、人間が吸いこむことが多く、乳幼児や小さなお子さんには影響が強くあらわれる。

ピレスロイド系殺虫剤は神経毒で、温血動物には低毒性とされているが、大量に吸いこめば中毒を起こす。その症状は、悪心、嘔吐、下痢、頭痛、耳なりなどで、重症になると呼吸障害、ふるえなどを起こす。微量でもアレルギーを起こしている可能性がある。

〇ゴキブリ駆除剤をヒトが吸い込むと

ダニ、ノミ、ゴキブリ退治といえばくん煙剤で、虫を根絶やしにする。害虫が死ぬことは、部屋中に毒物が行きわたることで、そこで暮らす人は毎日摂取して化学物質過敏症やアレルギーになる恐れがある。中外製薬のくん煙剤を例にすると、有効成分はペルメトリン、ジクロルボス、メトキサジアゾンである。ペルメトリンは、ピレスロイド系の殺虫剤で、アブラムシ・ハエ・蚊・ゴキブリなどに効果があり、煙とともに部屋に拡がり、床面・壁・天井に残留する。人間が摂取する量は微量だが、アメリカ科学アカデミーはペルメトリンを発ガンの危険度の高い農薬と指摘している。

ジクロルボスはより危険な有機リン系の殺虫剤で、急性毒性が強いため劇物に指定され、国際がん研究機関は発ガン物質に指定している。

〇蚊取り線香も要注意だ

蚊取り線香は除虫菊を使っていると思うだろうが、ピレスロイド系の農薬アレスリンを主成分にデンプンで固め緑色に着色している。アレスリンを空気中に0,035g/mを蒸散させ、2週間吸わせた実験では、体重、血液、器官重量、各組織に異常はなく、蚊取り線香から出るアレスリンの量はこの700分の1程度だから、人間に障害が出るとは考えにくい。

長期間効果が持続する液体電子蚊取りには、別のピレスロイドが使われている。フラメトリンやプラレトリンは急性毒性があり、化学物質過敏症の原因となりうる。

〇防虫剤や防カビ剤の中身と毒性

無臭防虫剤「ゴン」は臭いがしないので防虫剤の主役になったが、エムペントリンと防カビ剤OPPがくわえられている。白元の無臭防虫剤「ミセスロイド」やエステー化学の「ムシューダ」にも使われている。

エムペントリンはウール地を食い荒らすイガに対する毒性がひじょうに強く、毒性は発ガン性から使用が禁止された殺虫剤BHCの7倍以上である。生物であるイガに毒性が強いのは、人間や動物にも強い毒性をもつと考えるべきだろう。防カビ剤のOPPは1970年以降日本では使えなかったが、使用を禁止するとアメリカが日本へ輸出できなくなるため、厚生省が使用を認めている。輸入のレモン、オレンジ、グレープフルーツに防カビ剤として使われ、OPPには発ガン性がある。OPPの衣類にその成分が残れば、刺激を受ける。

ナフタリン、樟脳も毒性が強く、子供が食べたりすると、吐き気、下痢、発熱、けいれんを起こすことがある。乳児が1gを食べると死亡することがある。パラジクロロベンゼン(白元の「パラゾール」の主成分)は発ガン性があり、また、燃やすと超毒物のダイオキシンが発生する。

〇ダニ用殺虫剤を毎目吸い込み続けると…

ダニ用殺虫剤の多くがピレスロイド系である。畳に殺虫剤を注入しても効果は24時間程度なので、毎晩畳に注入しなければならず、ペルメトリンを毎日吸いこみつづけることになる。ペルメトリンは環境ホルモンの疑いのある化学物質の一つで、微量吸入しつづければ、精巣や子宮に障害が出、免疫力の低下や神経障害を招く可能性もある。

〇安易に芳香剤、消臭剤を使っていないか?

日本人は、自然の香りよりも人工的な強烈な臭いを好むようになった。芳香・消臭剤の成分は非イオン界面活性剤が多い。非イオン系のPOEPは女性用避妊薬として使われ、タンパク変性作用がある。玄関やトイレの臭い以上に強烈な臭いを放出して、嗅覚を麻揮させるだけで、根本的な解決ではない。臭いは微生物がタンパク質や脂肪などを分解するためで、汚れを落とさなければなず、カビなどが繁殖しアレルギーなどの原因となる。

 

◎第4章 ダニ、カビ、ペットもシックハウスの原因だった

ダニはもっとも強力なアレルゲンで、アレルギー患者はダニアレルギー、カビアレルギーが多い。家の中のペットもアレルギーの原因になることもある。有害化学物質が体の免疫を異常に活性化し、通常では反応しないダニやカビ、ペツトなどに反応し、アレルギー症状を引き起こしている、化学物質とダニやカビなどが複合的に作用して起こるシックハウス症候群である。

〇なぜ、アレルギーが急増したのか

3人に1人がアレルギー症状に悩まされ(1992年)、なぜ急増したのだろう。

アトピー性皮膚炎はダニなどのアレルゲンが皮膚から侵入し、かぶれや湿疹などの症状があらわれるが、ホルムアルデヒドや農薬などもリンパ球を刺激し、症状をさらに悪化させる。花粉アレルギーは100年ほど前に、イギリスで発見された。欧米人にアレルギーは一つは栄養状態がよいからで、高タンパク、高脂肪の食事を食べている人は免疫力が高く、アレルゲンに反応しやすい。栄養状態が悪いと免疫力が弱く、アレルギーになる人は少ないが感染症にかかりやすい。日本も高タンパク、高脂肪の食品を取るようになり、感染症にかからなくなった反面、アレルギーを起こしやすくなった。肉類には不飽和脂肪酸が多く、ヒスタミンと同じ作用をするロイコトリエンができやすくなる。この活性作用は強力で、気管支を収縮させたり浮腫を起こす作用は、ヒスタミンの1000〜5000倍も高い。

これだけでは、アレルギー症状の人が3人に1人の事態にはならないだろう。免疫力が高まり、病原体を撃退する力が高まったところに、化学物質というもう一つの力がくわわり、免疫を異常に活性化させ、花粉、ダニ、カビなどのタンパク質にまで反応するようになった。

〇活性酸素とアレルギーの関係とは

酸素は呼吸で体内に取り入れられ、そのうち約2%が活性酸素となる。活性酸素もアレルギーの急増に関係している。活性酸素とは反応性の高い酸素のことで、免疫の働きを助けるが、過剰になると細胞を老化させ、遺伝子を傷つけ細胞をガン化させるなどの働きをする。活性酸素が過剰にリンパ球を生成させ、リンパ球が増えれば、アレルギーが起きやすくなる。活性酸素は一定量に保たれ、余分な活性酸素は消滅し、細胞へ害を与えないようになっているが、活性酸素が過剰にふえてしまう原因の一つが、有害化学物質である。

〇欧米型の建築様式の功罪

欧米の住宅をまねたものは、高温・多湿な日本の気候には基本的には合っていない。日本に適しているのは、戦前の住宅だろう。縁側があり、戸を開けると部屋が開放状態になり、風が吹き抜ける。カビ、ダニもふえないし、縁の下はつねに乾燥状態でシロアリが繁殖しにくかった。

現在の住宅は壁で仕切られ、特にマンションはいりくんだ構造で風が吹き抜けにくい。個室化が進み部屋を開け放つことがむずかしい。土台の通気用窓も小さく、縁の下に湿気がこもる。すき間風は入りにくくなった。快適さを求めてつくられた住宅が、シックハウス症候群を急増させることになり、ダニやカビが一年じゅう繁殖できるようになった。

〇高気密住宅がダニアレルギーを急増させた

ダニはあらゆる場所に生息し、日本に約1500種がいる。ダニはクモの仲間で、もっとも小さいホコリダニで0.13mmくらい。人間の血を吸うのは一部のダニだけ。家屋の中には30〜40種類のダニが生息し、総数は一家屋全体で数千万から数億匹だろうから、ダニを根絶やしにするなど不可能だ。

人間を刺すのはツメダニが主で、刺されて5〜8時間後に発疹などの症状があらわれ、なかなかかゆみがおさまらない。

アレルギーを起こすのは、ヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニで(60〜80%)、ヒョウヒダニのアレルギーは即時型で、アレルゲンを吸いこんでから数十分から数時間で症状があらわれる。畳、ジュウタン、布団などにいる。新しい畳と古いのとでダニの種類が違い、新しい畳ではツメダニやコナダニなどが多く、1年以上たつとヒョウヒダニがふえる。ダニが繁殖しやすいのは、気温が20〜30℃、湿度が75〜85%くらいの条件で、冬場は減るが高気密化・高断熱化がダニの繁殖を容易にしている。

ダニとアレルギーとの関係はひじょうに密接である。乳幼児に多いアトピー性皮膚炎はダニが原因で、幼児では肘や膝の裏側に出て、カサカサした発疹となり、ひじょうにかゆいので、掻くとひっかき傷ができる。「アラジックマーチ」という言葉があるが、乳幼児でアトピー性皮膚炎を起こし、1〜4歳でゼンソクを起こし、さらに数年後にはアレルギー性鼻炎を起こすというように、人間の体をアレルギーが行進するような状態を指す。子供が成長して行動範囲がかわり、アレルゲンの種類が違ってくるので、こうした現象が起こるのだろう。アラジックマーチの最大の犯人がダニで、小児ゼンソクの90%がアレルギー性で、その50〜80%はハウスダストが主なアレルゲンであり、その主成分はチリダニである。子供のアレルギー性鼻炎の8〜9割はハウスダストが原因である。

ダニアレルギー増加の原因が住宅の高気密・高断熱化だから、換気に気をつけよう。杉並区F小学校全生徒766名を対象に、コンクリート住宅と木造住宅が、アレルギーの発生に影響しているかを、ダニに対するIgE抗体の保有率との関係で調べた。@木造住宅、Aアルミサツシ住宅、B鉄筋・鉄骨住宅の3タイプで、2年間にゼンソク、ジンマ疹、アレルギー性鼻炎と診断された、またはアレルギーの治療を受けた者を「アレルギー歴経験群」とし、生徒たちがどの程度ダニーIgE抗体を保有しているかを調べた。ダニIgE抗体をもつ割合は、木造住宅が23.0%、アルミサッシ住宅が30.5%、鉄筋・鉄骨住宅が35.3%で、気密性が高まるのに比例して抗体保有率が高くなった。アレルギー経験群と未経験群とでは、経験群では52〜54%と差がなかったが、未経験群では、9.5%、13.8%、26.0%と、気密性が高まるにしたがって抗体保有率が急増していた。経験群では保有率が上限に近く、住宅の構造の違いぐらいでは差が出ないのだという。

〇カビアレルギーも住宅が原因だった

次に多いのがカビで、ダニ、花粉と三大アレルゲンの一つである。地球上のあらゆるところにカビが生息し空気中にもカビの胞子が浮遊している。

カビが原因のアレルギーは、季節型と通年型に分けられる。前者は急性であることが多く、アルテルナリアやクラドスポリウムなどによって、後者は一年を通じて発生する慢性タイプで、カンジダ、ペニシリウム、アスペルギルスなどによって起こる。

[クラドスポリウム] タイルの目地、ビニールクロス、塗装面などに繁殖、揮発した化学物質と複合的に作用する。シックハウス症候群を起こす典型的なカビ。

[アルテルナリア] 塗装した表面やプラスチツクシートの表面にも繁殖する。このカビも、シックハウス症候群の原因。

[カンジダ] 人間の体内や粘膜に生息し、乳児のオムツかぶれを引き起こす。

[ペニシリウム] アオカビと呼ばれ、食品、とくに果物を腐敗させる。

[アスペルギルス] コウジカビやクロカビとして知られる。クロカビは、塗膜、接着剤、プラスチックシートなどに生えて劣化させる。

住宅内のカビはゼンソク、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、あるいはアトピー性皮膚炎の原因になっている。カビはプラスチツクや金属でまで繁殖するが、木製のタンスや机、椅子、皮革類、畳などを好む。住宅建材、電子部品の接着剤部分にも繁殖する。

カビは相対湿度80%以上、28℃前後でもっともよくふえる。サッシ窓の住宅は湿度が高く、冬場でも温度が高いので繁殖が容易になる。カビはダニのえさなので、ダニをふやすことにもなる。

〇ペットによるアレルギーはなぜ起こるか

イヌよりも、ネコでアレルギーを起こす人が多い。ネコのアレルゲンはフケと唾液中のタンパク質で、ネコを飼う家に足を踏み入れただけでアレルギーの発作を起こす人がいる。イヌのアレルゲンは、皮膚の破片やフケで、そのタンパク質が人間の免疫を刺激する。ダニがペツトのフケをえさとするからダニをふやすことになる。

 児童のダニIgE抗体の陽性率をみると、室内で飼う家の陽性率は39.3%で、室内で飼わないと29.6%と、10%もの差があった。アレルギー経験群では、室内で飼っている群が72・5%、飼わない群が16.3%と大きな差があった。

ゼンソクにしても、アレルギー性鼻炎にしても、その最大のアレルゲンはハウスダストで、それはダニの死骸や糞を主成分とし、そこにさまざまな化学物質や、あるいはペツトのフケや唾液、さらに繊維などが混じり合ったものである。

 

◎第5章 あなたを包む化学物質 どう排除すればいいか

シックハウス症候群の最大の原因は、住宅内の有害化学物質であるから、住宅内から排除すればシックハウス症候群は治るし、かかる心配もなくなる。ダニやカビ、ペツトがアレルギーの原因となるが、有害化学物質と複合的に作用して、アレルギー症状を引き起こしているので、有害化学物質の排除が必要である。

〇虫を殺す製品は使わない

ゴキブリくん煙剤、衣類用防虫剤などは便利なので、疑問ももたずに使っている。蚊やゴキブリを殺すものが、人間に悪影響をもたらさないのか、という素朴な疑問をなぜもたないのだろう。農薬に脅威を感じるのは、農薬で中毒を起こしたり、殺人事件や自殺があるからだろう。

防虫製品は使わなくても不自由はない。蚊は網戸で防ぎ、入ってきても手でつぶせばいい。蚊によるウイルスの媒介もなくなった。ハエ・蚊用殺虫剤は使ってはいけない。霧状に部屋に広がり、吸いこみやすく、ひじょうに危険だ。ハエも、網戸で防ぐことができる。

ゴキブリは伝染病を媒介する。エサで誘いこみ粘着物で捕らえる製品には有害化学物質が使われていないので心配ない。人を刺すツメダニが畳の中で繁殖するが、ダニは50℃で20分以上加熱すると死ぬので、夏の太陽が照りつけるコンクリートの上に畳を並べ、裏表を逆にしながら2時間以上干すと死ぬ。ダニ用殺虫剤など使わなくてすむ。

衣類用防虫剤も使わなくてすむ。虫に食われるのが心配なら、ポリエチレン製の袋に入れてガムテープで密封すればよく、密閉可能な衣装箱が売られている。

芳香.消臭剤は必要のないものである。悪臭のもとを断たずに、別の臭いを部屋中にばらまいても、一時しのぎにすぎない。悪臭を断つためには、こまめに掃除すればよい。

〇殺虫剤を使わずにダニを減らす方法

ダニの最大の繁殖場所は布団で、太陽に当てるとダニを減らせる。布団干しで綿の水分が減り、熱である程度死ぬ。取りこむ前によく叩き、掃除機をかければ、表面のダニをかなり減らすことができる。ダニが多いのは綿の部分で、ダニが通り抜けできない布地を使った布団が販売されている。島津医院の幸寺院長はいう。「防ダニ剤を使わない布団があります。高密度に織り上げた布のカバーでダニが中綿に入らないようにしてあり、患者さんにはけっこう効果があります」

ダニを減らし、カビ防止には、畳や床などをこまめに水拭きし、窓を開けて乾燥させる。タイル目地の黒いカビは、粉せっけんとブラシでこすれば落とせる。カビ取り剤「カビキラー」には、毒性の強い次亜塩素酸ナトリウムと水酸化ナトリウムが使われ、目に入ると失明の恐れがある。

〇石油ストーブの有害物質対策とは

石油ストーブではかならず窒素酸化物などの有害化学物質が出る。排気型の石油ストーブ、電気ストーブにかえればいいし、部屋の空気を入れ替えるなら1時間に1回程度必要になる。エアコンを使う場合はフィルターをこまめに掃除する必要がある。掃除機は、無処理の紙パックを使うようにしたい。

〇消費者はこの問題をどう考えるべきなのか

家の中はモノであふれ、電気製品や、家具、ベツド、衣類でさらにせまくなる。これらから化学物質が揮発し、シックハウス症候群に陥っている人も多い。わざわざ買って体に害を受けるのはじつに馬鹿馬鹿しい。

不必要な製品が多すぎる。芳香・消臭剤など本当に必要なのだろうか。「臭いものにフタ」という安易な方法で、その化学成分で被害にあっている人もいる。不必要で危険な製品が多いのは広告・宣伝に踊らされ、安易に買うからである。企業は利益さえ上げられるなら、危険とわかっている化学物質でも、法律に触れない範囲で平気で使い、社会貢献という使命もあるはずだが、そうした良心、姿勢はほとんど見られない。企業寄りの行政には、期待などできない。安全な暮らしを手にしたいなら、自らが目先の便利さにとらわれず、本当に必要で安全な製品を選択していくことが必要だ。

 

◎第6章 安心して住める家を手に入れるために

中古住宅を勧めたい。年数がたち住宅建材からの化学物質発生が少ないからだ。風呂場や台所などを手入れすれば、築後50年程度は使えるので、それほど不都合はない。

〇私はこうして我が家をリフォームした

買った中古住宅は築後20年で、リフォームしたのは台所の壁、和室の壁、畳であった。

畳: 2枚だけ防虫シートを使わない新しい畳にし、ほかは畳表を裏返しにした。

壁: 台所の壁が至るところでゆがんでいた。プラスターボードを貼った。壁紙は、紙製で防カビ剤を使っていないもの、接着剤は有害化学物質が出ないものを注文した。じゅらく壁は有害物質が出ることは少なく、また、湿気を吸収して調節する働きがあるので、一階と二階の和室の壁に使った。臭いもまったくなく、快適に暮らしている。中古マンションでも、できるだけリフォームの箇所を少なくし、VOCの出る心配の少ない材料を使えば、安心して暮らせる。

〇防虫畳を使わない方法とは

稲わらを使った畳は約4割で、残りはポリスチレンフォームなどの合成樹脂を使った化学畳だそうで、化学畳は防虫処理しなくてもよい。ダニがふえるのが心配なら、炭化コルクやおがくずなどを使った畳を選べばいい。炭化コルクにはダニが嫌う性質があり、湿気の調整機能も果たし、断熱効果や軽量化にもつながる。

〇シロアリに食われない家をどう入手するか

中古戸建て購入ではシロアリ対策の問題がある。シロアリ駆除はしないつもりでいる。

シロアリ駆除剤は使いたくない人は、シロアリを寄せつけない方法をとればいい。ある主婦は農家の建材で家を建て、シロアリ駆除剤も使わず次の方法をとった。@床下を高く上げ、換気口をたくさんつける。A青森ヒバで土台をつくる(50年以上のヒバでないと、ヒノキチオール油の量が十分でない)。B木酢液を土台に塗布する。建築時のみでなく、毎年1回木酢液を土台周辺に散布する。Cセントラルクリーナーをつけ床下換気にした。D建築中も木くず、木片をつねに片づける。E家の土台が濡れないように気配りをする。 

長男のゼンソクはほぼ治まり、次男のアトピー性皮膚炎もかなり軽くなった。

〇シックハウス症候群にかかったらどうするか

まず引っ越すことだが、引っ越し先の安全を確認する必要がある。それが困難なら、換気をよくして、室内の有害化学物質を外に出す。化学物質の濃度は「汚染発生量/換気量」できまり、換気量が4分の1になれば化学物質が4倍発生したのと同じになる。空気清浄器はほとんど役に立たない。換気しても症状が改善されないならリフォームするしかない。

〇リフォームでVOCを防ぐには

[壁の対応策] 壁紙をはがし、接着剤を取り除く。石膏ボードにVOCを遮断する働きのある塗料シェラックワニスを塗り、合板の接着剤からのVOCを防ぐ。壁の下地材の合板に直接壁紙が貼られている場合は、合板をプラスターボーにかえる。室温を上げて、VOCを揮発させ、何日間かつづけるとある程度の量を減らせる。その上にシェラックワニスを塗って、VOCを閉じこめる。壁紙は、ポリ塩化ビニル製のものをやめて、布、紙などでできたクロスを使い、防カビ剤や難燃剤などが使われていないことを確認する。接着剤は、デンプンのりなどの天然系のものを使用する。

[床の対応策] 床は合板のフローリングをムクの板材にかえる。

[畳の対応策] 防虫シート抜きの畳にする。手間がけっこうかかるので、費用は安くない。ダニが心配な人は、炭化コルクなどを使ってもらう。

シロアリ駆除剤が原因なら、石灰水をまいて殺虫剤を中和する。それでも影響が残るときは、防湿シートで覆い殺虫成分を閉じこめるか、モルタルを流し殺虫剤を閉じこめる。

〇戸建てを新築する場合の注意

基本的にはVOCを出さない建材・内装材を使うように工務店と相談する。シックハウス症候群の心配のない家を設計・施工してくれる業者がふえている。

大手ハウスメーカーに頼む人が多いが、大手は自分のところで施工することは少ない。地元の工務店に下請けに出して、マージンだけを取るケースが多い。工務店はピンハネされた分を取りもどそうと、手抜き工事をしたり安い材料を使うことになりがちで、どうしても欠陥住宅になりやすい。また注文主の意向が工務店に直接伝わらないため、トラブルが生じやすい。

注文する場合、地元のしっかりした工務店に頼むのがよい。VOCの出ない住宅を建てる場合、特別の仕様を依頼するので、意思の疎通がスムーズにいくような業者に依頼しなければならない。依頼するポイントは次のようになる。

[土台の注意点] 床下の通気性をよくしてもらう。地面から床までの高さを60センチ以上にするとよい。また、「基礎のコンクリートと土台の間に2〜3センチ程度のすき間を設ける基礎パッキン工法を採用すれば、床下全体に風が通り、湿度のむらがなくなるので、土台の腐りが防げます」(『健康な住まいを手に入れる本』コモンズ刊)。通気口が小さくて少ないため、湿気がこもり、強力なシロアリ駆除剤が大量に使われることになる。木酢液やヒバ油などを使う、炭をまくと効果的だ。換気扇で空気を循環させるという方法もある。土台には、ヒノキかヒバを使う。米ツガは、シロアリに食われやすいとされる。

[柱の注意点] 木造軸組工法にし、柱となる木材は、防腐加工されていないものを使う。ヒノキやヒバがよいが値段が高い。

[畳の下地材の注意点] ムクの板材にすべきだろう。

[畳の注意点] 防虫シートが使われていないものを注文する。

[床板の注意点] ムクの板にし、傷が心配なら天然系のニスを塗ってもらう。

[壁の下地材の注意点] プラスターボードか、モルタルやしっくいを使う。

[壁紙の注意点] 壁紙は貼らないという方法もあり、化学物質を心配しなくてすむ。殺風景だという人は、紙や布などの天然系の壁紙を、デンプンのりなど天然系の接着剤を使って貼ってもらえばよい。和室の場合、じゅらく壁などVOCの出にくい壁材を使う。

〇関連業界の対応はどうか

住宅関連業界では、どのように対応しているのだろうか。

[シロアリ駆除業界] 頭が痛いのがシロアリ駆除業者である。臭いの強い有機リン系殺虫剤から、無臭のピレスロイド系殺虫剤に切り替えたが、溶剤に臭いがあり苦情も多い。油剤から乳剤に切り替えたり、殺虫剤をマイクロカプセルに詰めシロアリがかじると染み出る仕組みにする、殺虫剤を泡沫にして土壌に吹きつける、殺虫剤を組みこませた防虫シートを使うなど、工夫している。

[木材防腐業界] クロム・銅・ヒ素化合物系の防腐剤の使用量は減り、アルキルアンモニウム化合物系はコストは約2倍で防腐効果は8割程度しかないが、毒性が低く使われる。

[壁装材料の業界] 壁のクロス材に自主基準をつくり、自主基準を満たした壁紙にたいしてマークの貼付を認めているが、マークを獲得しようと努力しているメーカーは少ない。

〇十分とはいえない大手ハウスメーカーの対応

大手ハウスメーカーも対策を立て始めた。三井ホームは1996年11月以降の施工物件から、ホルムアルデヒドをふくまない接着剤の使用を始めた。積水化学工業は97年1月から、健康に配慮した住宅を売り出し、ホルムアルデヒドのない接着剤を使った壁と天井材を標準仕様にし、24時間換気システムを標準装備した。抗菌フローリングを使い考え方に問題がある。大和ハウス工業では、VOCの低減に取り組み、健康住宅仕様としてクロス接着剤のゼロホルムアルデヒド化、床材・下地合板・下地パーティクルボードにはF1建材を使い、台所や洗面化粧台、シューズボツクス、押し入れなどの低ホルムアルデヒド化を進めてきたという。インテリアドアや引き戸も、F1合板を使用し、ポリ塩化ビニル製品も削減したというが、シックハウス症候群対策としては不十分だろう。F1規格とはいえ、ホルムアルデヒドがふくまれるので揮発する。また、ポリ塩化ビニルの製品も削減で使わないわけではない。坪39万円代と低価格を売り物にし、建材を自然なものに切り替えるのには限界がある。

ハウスメーカーも個々に取り組みを見せてはいるが、消費者の健康を守るというよりは、シックハウス症候群を逆手にとって、商売に利用しようとしている意図が見え隠れする。

 

◎エピローグ 豊かさ、快適さとは何か いま一度見直したい

1960年代の家は板壁の平屋が多く、家の中はひどく暗い印象を受けた。廊下も台所も板張りで茶色だった。しだいに白やべージュの二階建住宅がふえ、高度経済成長期のころで物質的にも豊かになったころだ。見た目も美しく、玄関も廊下も部屋も明るく、文化的に見えた。いまになって思うと、これらには表面からは見えないマイナス面がいくつもあったのだ。

このような住宅が主流を占め、建設会社や工務店の戦略でもあった。住宅には、経済性、快適性が重視されべきだが、住宅会社にとっては経済性が重要だ。国内産材は値段が高く、輸入木材を合板やパーティクルボードにして使った。しっくいの壁から壁紙を使うようになり、こうした住宅を無批判に受け入れてきた消費者にも責任がある。みかけ、高気密・高断熱、低コストなどに目を奪われ、日本の家の本来のあるべき姿を忘れた。

〇本当の住宅の快適さとは

住宅に求められるものは、豊かさ、快適さ、経済性、文化的といった要素だろう。豊かさ、快適さとは何だろう。化学物質たっぷりの見た目だけ美しい建材や内装材を使い、クーラーや暖房器具を使うのが、豊かで、快適で、文化的な暮らしなのだろうか。行き着く先がシックハウス症候群。豊かさ、快適さ、経済性を追求し、逆の方向に向かっているように思えてならない。自然とうまく同調しながら、豊かさや快適さを求めていないからだろう。

都会では風は吹き抜けないし、たまに吹き抜けても、コンクリートの熱で暖められた風である。風とともに排気ガスが入ってくる。しかし、窓を閉じていれば、化学物質がこもり、さまざまな症状があらわれるし、さらにダニやカビがふえ、ゼンソクやアトピー性皮膚炎などのアレルギーを引き起こす。この悪循環を断ち切るには、街のつくりをもかえていかなければならない。住宅は、健康に不安のないものにし、風の通りのいい住宅の構造にする。庭には多くの樹木を植えると、街全体が夏涼しく、冬は暖かくなる。

もう一つは、排気ガスをどうするかだ。ディーゼル車の排出規制を厳しくし、電気自動車などの無公害車を普及させていく。排気ガスが有害であることは誰でも知っているから、ゴミ焼却場からでるダイオキシンや環境ホルモンを気にする前に、自分の車が出している有害化学物質に心を向けるべきである。

〇真の豊かさを求めて

豊かさとは、物を買いこむことだろうか。殺虫剤を使って蚊やゴキブリを殺すことが文化的な生活だろうか。シンプルで無駄のない生活が送れないだろうか。無駄なものを買いこみ、健康を脅かされている人が多い。豊かさとは何か、文化的とは何かを、よく考える必要があるだろう。人工的なものに囲まれた暮らしが、文化的なのではない。不必要で危険性の高い製品に囲まれた暮らしが、豊かなのではない。

本当の豊かさ、文化的というのは、自然によくなじんだ家に住み、そして本当に必要で安全な製品に囲まれた暮らしである。