日時 平成23年3月15日(火) 午前10時
                 場所 上小阿仁小・中学校 体育館

 今年の冬は例年に比べ雪が多く、校門横の石碑が見えなくなっていましたが、校訓である「誠実」の文字が見えるようになり、春の訪れを感じる季節となりました。ただ今、卒業証書を手にした27名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんは、本校卒業の第
64期生であり、今年度先頭の浅野喜孝君は5,815人目、最後の山形明日香さんは
5,841人目の卒業生となりました。 このようにたくさんの卒業生を輩出した伝統ある本校の卒業式にあたり、皆さんの卒業を祝い、村長をはじめ、多数の御来賓の方々の御臨席を賜りましたことに、衷心より感謝申し上げます。 また、保護者の皆様、御家族の皆様、お子様の御卒業を心よりお祝い申し上げます。卒業生の皆さんが誕生した平成7年度は、秋田自動車道横手〜湯田間の開通や二ツ井バイパスの全線開通等、遅れていた本県交通事情の高速化に喜び、ドジャースの野茂英雄投手がアメリカ大リーグで新人王を獲得するという希望に満ちた話題もありました。しかし、東京外国為替市場の円相場が、一時1ドル79円75銭と戦後最高値を更新し、景気低迷により空前の就職難と言われた年でもありました。そのような状況の中で、お子様の誕生は、地域社会に光を与えてくれました。日一日と成長する我が子の様子は、御家族皆様の喜びであったと思われます。あれから15年が経過した本日、たくましく成長した姿に、御両親をはじめ御家族の皆様の感慨もひとしおではないかと思われます。改めて、お子様の卒業をお祝いするとともに、これまで本校の教育活動に御理解、御協力を賜りましたことに、深く感謝申し上げます。 さて、思い起こしてみると卒業生の皆さんは、平成19年4月、小沢田小学校と沖田面小学校を統合した上小阿仁小学校の最初の最上級生として、小中併設校となったこの校舎で、新しい小学校の伝統作りに励んでくれました。小沢田小16名、沖田面小11名だった5年生が6年生になり、一気に仲間が増えました。八橋球場での全県野球大会準優勝は、全校児童や地域が一体となり、新生上小阿仁小学校の素晴らしいスタートになったと思います。そして中学校への入学。同じ校舎で、1階から2階への教室移動を経験したのも、君たちが初めてでした。生徒会テーマを振り返ってみると、入学した平成20年度は【躍進〜さらなる向上の道を〜】、21年度【超越〜挑戦する心〜】、そして今年度【結束〜無限の可能性を目指して〜】と変遷してきました。今年度の生徒会テーマを募集する際に、執行部から3つの願いが示されました。それは、「全校一丸となる」、「礼儀・マナーを守る」、「当たり前のことを当たり前にできる」という3点でした。小中併設校として新しい校風を創ろうという当時の先輩たちの願いから一歩進んで、確かな学校を築こうという想いを固め、決定したテーマであったからこそ、その後の様々な活動がしっかりと動き出したと思います。 平成22年4月。朝のあいさつ運動が、さわやかな声で、高らかに始まりました。全校一丸となった体育祭。前日までの雨も上がり、プラカードを先頭に整然とした入場行進や工夫を凝らした応援合戦等、3年生がリードしてしっかりと取り組んでくれました。修学旅行では、見学先の担当者や宿泊したホテルの方から、「礼儀やマナーがよく、また利用してもらいたい。」と、お褒めの言葉をいただきました。練習メニューをしっかりとこなし、当たり前のことを当たり前に取り組んだ部活動。郡市総体では、ファーストからのバックホーム、本塁タッチアウトで十数年ぶりに初戦突破し3位となった野球部。後半同点まで追いつきながら4点差で惜敗したバスケットボール部。陸上部は7名の入賞者が出て全県・東北大会に出場しました。野球部員やバスケットボール部員も加わっての駅伝は、男女ともに入賞し全県大会へ出場しました。見事なハーモニーを奏でた吹奏楽部は、金賞まであと一歩という、レベルの高い演奏でした。スキーでは齊藤慎也君が、全国大会にまで出場する活躍を見せてくれました。どれも、つらい時・苦しい時に声をかけ合って取り組んだ成果だと思います。部活動を通して友情が更に深まり、チームワークが強くなったと思います。 しかし、何と言っても学校祭が圧巻でした。執行部を中心に実行委員会を組織し、全校一丸となり取り組みました。各部門とも高い目標を掲げ活動できたのも、執行部のリーダー性とそれを全面的に支援した全校生徒の誠実な姿勢によるものと強く感じました。生徒の描いた手作りの食券や使えなくなった傘の骨を活用して作成したオブジェ、そのオブジェと一体になったテーマアート、そしてその傘のビニールを縫い合わせて作成したリサイクルバック。それを販売して募金活動に活用するなど新しい取組が随所に見られたことは、「無限の可能性を目指して」というサブテーマを実行してくれたと思います。学校祭終了後、黒板にたくさん書かれた執行部を讃えるメッセージは、皆さんのチームワークが所狭しと散りばめられた、無数の輝く星に見えました。 いよいよ卒業です。卒業にあたり皆さんに1つだけお願いがあります。それは皆さんが、自分の目指す道で「一流」を極め、将来ふるさととの関わりを持って生活してもらいたいということです。皆さんは今年度、たくさんの発信をしました。村ふるさとフェステバルで予定していた中学生の万灯火は雨で中止となりましたが、学校祭での八木沢番楽を新たに加えた郷土芸能発表、熱演の劇「泥かぶら」、ダンスや吹奏楽演奏、そしてお客様の心に強く響いたのは、3年生27名による学年合唱や全校合唱でした。「コスモス」や「レッツ・サーチ・フォア・トゥマロウ」を歌い終えた後、観客から大きな拍手をもらいました。あの時の拍手は、おそらく生涯皆さんの心から消えることはないと思います。その拍手には、「君等にこの村の将来を頼むぞ」という思いが込められていると感じました。昨年「ふるさとに戻ってふるさとのために、ふるさとを出てもふるさとのために」と皆さんの先輩を送りました。その気持ちは、皆さんに対しても同じです。しかし、それを実行することは、簡単なことではないと思います。そのため皆さんに、自分の目指す道で「一流」を極めてほしいのです。今、本物が求められている時代です。美味しいお菓子の店があると、遠くても買い求めます。例えば、美容師を目指している人が努力してコンテストなどでよい成績を収めると、その結果は広く知れ渡ります。その人がこの村の良さを取り入れお店をこの村で開いたら、遠く離れた地域からもお客さんが訪れるということです。山形県庄内地方に、イタリアンレストランで成功している奥田政行さんという方がいます。同氏は地元の高校卒業後、東京でイタリアン・フレンチ等西洋料理の修業をし、24歳で地元へ戻り、在来野菜を使ったイタリアンレストランを経営しました。地場産野菜を食材として使うことで、農業を含め地域の活性化をしていると、図書館にも置いてあるこの本「人と人をつなぐ料理〜食で地方はよみがえる」で紹介されています。皆さんがそれぞれの目指す道で「一流」を極めることにより、将来様々な可能性が開けてくるということです。 先日の東北地方太平洋沖地震では、自然エネルギーの大きさに我々人間はなすすべもなく、多くの方々が被災されました。亡くなられた方々の御冥福をお祈りすると共に、ふるさとを愛する人たちが力をあわせ、日本国民皆で助け合い、必ずや復興できると信じております。上小阿仁村は人口約2,800人の小さな村。しかし、日本一美しい村。この村を、いつも大きな喜びの声が聞こえる豊かな村にできるのは、皆さんしかいないのです。卒業して高等学校、専門学校、大学あるいは就職と、この先の進む道は一人一人違ってきます。一旦ふるさとを出ても、この学校から見える霧に包まれた村並み、真っ直ぐそびえる姫ヶ岳、豊かに流れる小阿仁川など豊かな自然が皆さんを育んできたことを忘れないでほしいと思います。皆さんのために、教育環境を整えてくれた村教育委員会及び村当局、義務教育を支えてくれた教職員、9年間学校給食を作ってくれた給食センター調理員の方々、そして15年間皆さんを育ててくれた家族の「思い」に、感謝の心を忘れずに、「ふるさとに戻ってふるさとのために、ふるさとを出てもふるさとのために」と志を持ち、成長してほしいと願っています。今日の卒業証書の一文字一文字に、私のその気持ちを込めたつもりです。 最後に、保護者の皆様、3年間お預かりした子どもたちをお返しします。私ども教職員は、精一杯の努力をしたつもりですが、至らぬ点も多々あったのではないかと思います。今後は、卒業生の活躍を期待し、皆様と共に心から声援を送っていくことをお約束し、式辞といたします。
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